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<Meet STEAM> 毒キノコから新薬開発探る研究 立命館大薬学部教授・井之上浩一さん

2022年1月24日 11時16分 (1月25日 12時52分更新)

井之上浩一さん

 まだ解明されていないことも多いキノコの世界。特に「有用でない」とされる毒キノコは、研究がほとんど進んでいない。そこに着目した立命館大薬学部(滋賀県草津市)の井之上浩一教授(47)は、毒キノコの成分を地道に調べ、新薬に生かす可能性を探っている。文字どおり「毒薬変じて薬となる」か。(聞き手・酒井ゆり)
 ー毒キノコに着目したきっかけは。
 日本には、天然のキノコが五千種類以上あるとされ、名前も分からないものが数多く存在しています。昔から研究されてきましたが、分類は色や形などの形態学が中心でした。遺伝子解析や分析技術が発展し、調べを進めていくほど新しい発見があり、大きな神秘を感じます。
 ただ、毎年、毒キノコの中毒事例が発生しています。国立医薬品食品衛生研究所などで検証されるのですが、指標となるものがまだきちんと整備されていません。「この毒キノコでは」と思って成分を調べたら、全く別の毒が見つかることもあります。

毒キノコの成分を分析する装置=滋賀県草津市の立命館大で


 ー毒はどのように調べますか。
 まず、採取したキノコを冷凍保存します。その後、ミルを使って粉砕したものを特殊な機械にかけ、成分を分離します。さらに、別の分析装置でその成分を細かく調べ、どんな化学構造か、毒はあるのか、あるならどんな毒なのかを調べます。
ー毒キノコが薬になる可能性は。
 例えばツキヨタケの毒性成分は、がんの治療薬になるのか、スイスで研究が進んでいます。アルコールと一緒に食べると悪酔いするヒトヨタケは、依存症予防に利用できる可能性が指摘されています。他にも、インフルエンザの抗体を誘発する成分を含むキノコもあります。
 ー食べられるキノコも調べているのでしょうか。
 天然のキノコは、食べられる、食べられないの区別が難しい。動物が食べても大丈夫なキノコでも、人間が食べたら体調を崩してしまう場合も。なので、いくら動物実験をしても、人間ではどうなのか分からないのです。
 ー新薬開発に生かすためのデータベースの作成を進めると聞きました。
 資金集めのため、二〇一九年に立命館大と講談社が共同でクラウドファンディングを実施しました。何とか寄付を得ることができたので、「毒キノコの分析データベース」の作成に取り掛かろうとした時、新型コロナで入構制限があり、実験もできなくなってしまいました。ようやく昨年十月ぐらいから、少しずつ規制も解除され、いろいろ進み始めたところです。

 いのうえ・こういち 1974年、千葉市生まれ。星薬科大(東京都)卒業。金城学院大(名古屋市)助教、静岡県立大講師、米国ペンシルベニア大博士研究員(兼任)を経て、2020年に立命館大薬学部教授。日本食品衛生学会や日本食品化学学会の理事。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)委員も務める。

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