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<ユースク> 駄菓子屋さん「銭々恐々」 銀行が硬貨取り扱いを有料化

2022年1月21日 05時00分 (1月21日 09時03分更新)
子どもたちでにぎわう駄菓子屋。支払いは硬貨が中心だ=三重県伊賀市で

子どもたちでにぎわう駄菓子屋。支払いは硬貨が中心だ=三重県伊賀市で

  • 子どもたちでにぎわう駄菓子屋。支払いは硬貨が中心だ=三重県伊賀市で
  • 小額硬貨の受け取りを断る飲食店のトレー表示=読者提供
 「銀行が硬貨の預入手数料を設けるようになっています。駄菓子屋を経営し、こつこつと小銭をためても手数料で消え、死活問題です」。三重県伊賀市で学習塾と駄菓子屋を営む伊藤直也さん(58)から、ユースク取材班に悲鳴のような投稿が寄せられた。低金利の長期化で金融機関が体力を奪われ、コスト削減に動いた結果、子どもたちの憩いの場にもしわ寄せの寒風が吹いている。
 伊藤さんが営む駄菓子屋「メリーキッズ」を訪ねると、学校帰りの子どもたちが小銭を握り締め、楽しそうに商品を選んでいた。ラムネやガム、チョコレートなど十円や二十円で買える昔ながらの駄菓子は根強い人気がある。
 伊藤さんは半導体工場で技術者として働いていた。組織で働く生きづらさを感じていた二〇一三年ごろ、息子が通っていた近所の駄菓子屋「メリーキッズ」が閉まると耳にした。寂しそうに話す息子を見て一念発起し、退職金で建物を買い取って学習塾と併せて続けることに。毎週水曜日と土曜日、塾が始まる前まで駄菓子屋を開いている。
 毎月の塾と駄菓子屋の売り上げを地元の銀行に入金しているが、昨年十一月、窓口で「今月から手数料がかかる」と言われた。五千円以下の紙幣と小銭が計五十枚を超えると五百五十円、それ以降も五百枚ごとに追加が必要。結局、十一月はお金を預けるのに千百円の手数料がかかった。
 「大したことない金額に思われるだろうが、少ないもうけへの影響は大きい」と伊藤さん。大阪まで仕入れに行き、十円の駄菓子を売ってももうけは一、二円だ。子ども相手の商売ではキャッシュレス化も難しい。ガソリン代の高騰に手数料がのしかかり、「楽しみにしてくれる子どものために頑張りたいが…。このままでは駄菓子屋をやる人がいなくなってしまう」とため息をついた。
 ユースク取材班には、名古屋市の六十代女性から、市内の飲食店で支払う際に一円と五円の使用を断られたという経験談も寄せられた。トレーには「銀行の硬貨手数料高額のため」と説明が書かれていた。女性は「自国通貨なのに支払いを拒否されるとは。小さな商店にしわ寄せが行くのは納得いかない」と話した。
 手数料導入は初詣などでおさい銭として多くの小銭を扱う神社にも打撃だ。神社本庁の広報担当者も「小さな神社ほど影響は大きく、困っているとの声が上がっている」と話した。

超低金利の余波 地銀・信金でも導入

 金融機関が硬貨の取り扱いを相次いで有料化しているのは、日銀の大規模な金融緩和に伴う超低金利でもうけが減り、コスト削減を進めているためだ。窓口で一定数以上の硬貨を入金する際の手数料は二〇一九年七月にりそな銀行、同十二月に三井住友銀行、二〇年四月に三菱UFJ銀行やみずほ銀行が新設し、この流れは地方の銀行や信用金庫にも広がっている。
 ゆうちょ銀行も今月十七日から手数料を新設。現金自動預払機(ATM)で硬貨を預け入れると一〜二十五枚で百十円、二十六〜五十枚で二百二十円、五十一〜百枚で三百三十円かかる。窓口では五十一〜百枚で五百五十円、百一〜五百枚で八百二十五円、五百一〜千枚で千百円で、以降は五百枚ごとに五百五十円が加算される。
 ゆうちょ銀行の広報担当者は「経営環境が厳しい中で、キャッシュレス化の推進と金融サービスネットワーク維持のために手数料を設ける」と説明。大量の硬貨を処理するATMのメンテナンス費用や窓口職員の負担を軽減する必要があるという。
 (石井宏樹)

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