【FC東京新時代】「クラブが初めて親会社を持つ状態になるという認識」
2022年1月20日 05時00分
今回の買収劇について、元社長の村林裕(68)は「クラブが初めて親会社を持つ状態になるという認識」と冷静に受け止めている。2017年11月にIT大手のDMMが買収したシントトロイデンで最高経営責任者を務める立石敬之(52)は自身の経験にも触れ「時代が変わってもクラブは存在する。経営者が代わってもFC東京が存在していくことがすごく大事。欧州では(クラブ買収を)ファンも受け入れて前に進んでいる」と言った。
IT大手のミクシィが描く未来像の輪郭も徐々に浮き彫りになりつつある。トップチームの強化に関して、インパクトのある大物選手の獲得ではなく、現有戦力を含む選手の育成とアカデミーの強化に力を入れていくというのも、その一つ。また、収益性の高い事業モデルの一環として、東京という立地を生かしたスクール事業の充実に加え、これまでは手付かずだった環境面の整備も進むとみられる。
所属する現役最古参のDF森重真人(34)は「歴史を守りつつ、チャレンジをしないと前に進めない」と強く指摘した上で、こう続けた。
「首都のクラブとして注目された時に恥ずかしくない環境でありたい理想はある。選手としてピッチで結果を残すことが前提。自分のチームを世界に誇れるようになりたいし、僕もまだまだ成長し続けたい」
FC東京で2度、監督として指揮を執った原博実(63、現Jリーグ副理事長)は「東京は華やかさがないと、お客さんの関心を呼ぶのは難しい。エンターテインメントとして面白いサッカーに期待したいね」と話した。
選手、フロントとして長年、クラブを支えてきた石川直宏(40、現クラブコミュニケーター)は過去と未来をつなぐ一人。「どれだけFC東京と自分をイコールで結べるか」。現役時代から使ってきたフレーズに全てが集約されているという。
「このクラブの歴史、伝統を築いてきた人たちには熱があった。きっとそういう人たちに憧れを抱いた人たちが、また新たな伝統を築いていくんだと思う。サッカー界は毎年、変化が起こる。異業種、異文化が交わった時に起こる変革さえも、どれだけ楽しめるか。ミクシィと一緒に、自分たちが変えていくんだという感覚を俺も、FC東京も持っていきたい」
先人たちが連綿と紡いできた歴史、伝統がある。一方で、もがき、手足をばたつかせ続けた23年間でもある。最大目標のリーグ優勝はいまだ果たせていない。青赤の未来はどこにあるのか。クラブの変貌を、誰もがしかと見届けなければならないだろう。(文中敬称略)=この連載、終わり
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