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小村久信(1928〜2000年)金沢市 三馬地区の郷土史発掘

2022年1月19日 05時00分 (1月19日 10時00分更新)

伝承や盆踊り 後世に

 金沢市の三馬公民館長として地域づくりに尽力する傍ら、地元に伝わる民話や伝承を調べ上げ、後世に残した。一度は途絶えてしまった地元に伝わる盆踊り「三馬泉じょんから」の復活にも尽力した。(西浦梓司)
 公民館委員や主事を経て、一九九〇年に館長に就任。郷土の歴史に詳しく、地元に情熱と愛を注いでいた。現館長の岩田時夫は「『俺について来い』と言う人ではなく、周りが付いて行きたくなるような人だった」と語る。岩田は小村が主事を務めていたときの公民館委員の一人。小村と話すためにやってきた住民たちの話を丁寧に聞き取る姿が印象に残っている。
 小村は地域の伝承を集めようと、三馬地区に伝わる昔話や地名のいわれを住民から聞き取っては細かく記録していた。その集大成が、八八(昭和六十三)年に公民館が発刊した「ふるさと三馬」に収録されている「三馬地区古今聞き書き抄」。三馬に初めて消防ができたときの経緯や地元神社のいわれなど、記録に残らず、歴史の中に埋もれていくような話が載せられている。
 二〇一四年から始まった公民館の事業「三馬昔たんけん」では、この本を基に作った冊子を片手に持ち、三馬小学校の児童が地元の歴史スポットを散策する。岩田は「本がなければ、子どもたちに地域の歴史を伝えることはできなかった」と話す。地道に活動してきた成果が、今も生かされている。
 郷土史の発掘に努めてきた小村だが、三馬泉じょんからの復活も功績の一つ。泉じょんからは、一九八〇年代ごろまで踊られていたが、担い手不足などにより途絶えてしまっていた。
 小村は自宅に保管されていた泉じょんからが収録されたカセットテープを基に歌詞を起こし、自分で何度も歌ってテープに吹き込んだ。踊りを覚えていた高齢の女性たちから振り付けを教えてもらい、九七年に再現した。さらに後世に伝えるために、保存会の発足にも尽力。現在も会員十五人が活動しており、夏祭りで踊ったり、小学校で教えたりしている。
 「頼まれれば、どんなことでも引き受けた」。長女の恵子(66)は、小村が晩年も入院先の病室で公民館のために原稿を書いていた姿を思い出す。「自分が生まれ育ったこの場所を心から愛していた」と語った。(敬称略)
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 次回は、石川県津幡町の創業百二年スガイ書店の社長を務め、町商工会長などもしながら、家族のピンチに懸命に立ち向かった酒井武治(一九三二〜九七年)を紹介します。

【プロフィール】こむら・ひさのぶ=金沢市出身。金沢第一中学校(現金沢泉丘高校)を経て、広島県の江田島にあった海軍兵学校に進んだが、すぐに終戦となり金沢に戻った。カメラが趣味だった。


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