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働きながらがん治療 動画で両立支援 

2022年1月18日 05時00分 (1月18日 13時55分更新)
 働きながら治療を続けるがん患者を支援する一般社団法人「ブリッジ」(名古屋市)は昨年末、知っておくと役に立つ知識や制度を説明するユーチューブチャンネルを開設した。両立支援に的を絞った動画配信は全国でも初めてという。新たにがんと診断される人のうち、約三分の一が働く世代。ブリッジに寄せられた多くの相談に基づいた解説は、患者の力になりそうだ。(編集委員・安藤明夫)

名古屋「ブリッジ」 全国初の試み 休み方、治療費軽減を解説


動画の一部。服部さん(右)とスタッフの2人がやりとりしながら説明する

 国が第二期がん対策推進基本計画で、がん患者の就労支援を柱の一つに据えたのは二〇一二年。翌年設立のブリッジは、キャリアコンサルタントの国家資格を持つ人を中心に、日赤愛知医療センター名古屋第二病院、愛知県がんセンター=いずれも名古屋市=の「がん相談支援センター」などで、仕事との両立を目指す患者の相談にのってきた。
 動画配信のきっかけになったのはインターネットなどを通じて、昨年実施したアンケート。対象は一六年一月以降にがんの診断を受け、診断時に雇用されていた男女二百一人だ。
 それによると、治療に入る際に勤務先から提供された情報のうち、最も多かった「どのぐらい休めるか」でも47・4%。「何も伝えられなかった」も18・8%に上り、復職を目指し、安心して療養をするための情報が、患者に届いていない実情が浮き彫りになった。
 約七千人から回答を得た国立がん研究センターの一八年度調査によると、診断時に仕事に就いていた人のうち、退職、廃業したのは約二割。うち六割が治療開始前に辞めていた。いわゆる「びっくり離職」だ。
 ブリッジでは、国の指定難病などがん以外の病気の人も含め、月に延べ十五件ほどの面談を実施。男女比は四対六で、多いのは四十〜五十代だ。相談の内容は多岐にわたる。これから治療方針を決めるが仕事はいつまで休めるか、給料はどうなるのか、抗がん剤を使うとして期間はどのぐらいか、通院しながらの治療で仕事に支障はないか…。
 「治療について考えるだけでも大変なのに、雑多な手続きに戸惑うのは当たり前」と代表理事の服部文さん。まずは勤め先の就業規則の休暇・休業規定を確認するよう助言し、その上で治療と体調に配慮した働き方を提案してきたという。
 動画は、これまで受けてきた相談を基に、知っておくといい情報をまとめた。配信されているのは、治療のための休みの取り方や相談窓口などを総論的に説く「これから治療と向き合うあなたへ」、会社ごとに違う就業規則を読む際の助けになる「代表的な休暇制度」、治療費の負担を減らす「高額療養費制度」(前・後編)の計四本。主に服部さんとスタッフが二人でやりとりしながら解説する。一本十三〜二十分だ。
 「就業規則を簡単に見られない職場もあるが、人事・労務担当者に復職への思いを伝えて相談してみてほしい」「復職後に通院・治療で使えるよう、単発で取れる年次有給休暇は残しておく方がいい場合もある」など助言は実践的だ。
 厚生労働省の一九年国民生活基礎調査によると、仕事をしながら通院する患者は四四・八万人。がん医療の進歩で治療成績が上がる中で増えている。一方で、職場の理解には差があり、治療に入る部下に上司が「100%の体になって戻ってこい」など誤った励ましをする例もあるという。
 がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院などに設置されている。身近な窓口だが、その病院の患者かどうかにかかわらず、本人も家族らも無料で利用できることは意外に知られていない。服部さんは「動画を通して制度に関する土台を共有した上で、患者と会社を丁寧につなぐ支援をしていきたい」と話す。
 ◇ 
 ブリッジは三十日と二月十三日の午後二時半〜三時半、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ってセミナーを開催。動画の内容を解説し、質疑応答もある。匿名や自分の顔を映さない設定での参加も可能で無料。ブリッジのホームページから申し込む。

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