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「食ってないよ」…マチカネタンホイザ有馬記念取消事件の真相に迫る【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2022年1月14日 06時00分

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マチカネタンホイザ

マチカネタンホイザ

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 レース部に手紙が届いた。いわく、ウマ娘界隈(かいわい)で1990年代前半の名バイプレーヤー、マチカネタンホイザを巡って「食ったよ」「食ってないよ」との議論がうずまいているという。
 マチカネタンホイザはミホノブルボン世代のノーザンテースト産駒で、G2時代の高松宮杯ほか重賞を4勝した。1994年の有馬記念を当日に出走取消。これが議論になっている“事件”だ。同日付中日スポーツは次のように報じている。「二十四日、入きゅう先の中山競馬場でジンマシンを発症。同馬は鼻出血でスタート直前に除外されたジャパンカップに続いて二走連続で出走取り消しとなった」(原文ママ。表記基準が現在と異なります)。
 問題はじんましんの原因。「カイバおけに紛れ込んだクモを食べた」という話がある。食べたところを誰かが現認したなら、そのスタッフは座して見ていたことになる。現認せずにクモを食べたと確定するには剖検でもして胃内容物を確認するほかない。同馬が高松宮杯を勝ったのはその半年後。どっこい元気だ。どちらもあり得ないシナリオ。実際何があったのか興味深い。これは調べがいがある。えい、えい、むん。
 当時、伊藤雄厩舎で番頭格の調教助手だった笹田師を直撃した。すると破顔一笑。「そりゃ食べたところを誰かが見たわけではないよ。出たじんましんが、顔面に限局したものだったの。厩舎社会で古くから『クモでも食べたときに出る』と言われる『クモ疹』というやつだったから」
 当時現場に出ていた社内の先輩によると、伊藤雄師は事後に「クモでも食ったんちゃうか」と言ったそうだ。他社の複数の先輩からも同様の証言を得た。弊紙は触れなかった(獣医学的には正しい判断だと記者は思う)が「タンホイザ、クモ食べて取消」という内容で打った社も複数あった。
 じんましんは体表にヒスタミンが過剰に分布することで起こる丘疹(きゅうしん)。異物食や薬物による中毒以外でも、急激に気温が下がったことへのストレス反応でも起こることがある。原因が特定できることはむしろまれだ。マチカネタンホイザ取消事件で何が引き金になったのかは謎のままだが、原因を異物食、とりわけクモだと積極的に推す理由はかなり薄い。したがって記者は「食ってないよ」派だ。

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