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【北の富士コラム】照ノ富士を絶体絶命に追い込んだ宇良と跳ね返した横綱 素晴らしい相撲だった

2022年1月13日 05時00分

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照ノ富士(左)が突き倒しで宇良を下す

照ノ富士(左)が突き倒しで宇良を下す

◇12日 大相撲初場所4日目(両国国技館)
 貴景勝の突然の休場で寂しくなったのは否めないが、他の力士たちが奮起し熱戦を展開し大いに土俵を盛り上げた。中でも明生と御嶽海の一番は物言いが付き、取り直しとなる大熱戦だった。
 腰の絆創膏(ばんそうこう)が痛々しい明生だったが、動きは激しく、とてもケガを感じさせなかった。対する御嶽海は下位力士との対戦に気を抜く悪い癖がある。相手が万全ではないので、情け心が出やしないかと少しばかり気にして見ていたが、全く無用な心配だった。
 立ち合い互いに頭で当たりあった。火の出るような当たりとよく言われることがある。まさにこの当たりがそれである。互角の当たりだったが、体力に勝る御嶽海が先に攻めて出た。あごを引き、大きな体を丸めるように押して出る。
 一方の明生はまともに押し合っては不利と見て、十分の左差しを狙ったが、御嶽海は両脇をしっかり固めて前に出る。やや押し負けた明生が回り込み猛攻をかわそうとする。ここが勝負どころとばかり御嶽海が体を預ける。明生はすでに逃げ場を失っている。それでも諦めることなく必死に左から突き落としを見せた。
 押しに集中している御嶽海は、この捨て身の突き落としに足を送りきれずに前に落ちてしまった。御嶽海は意外な抵抗に驚いたことだろう。審判の手が挙がり物言いとなるが、話し合いは意外に早かった。この判定は妥当なところであった。解説の境川親方も同意見。そして取り直しとなったが、すでに明生には戦う力が残されてはいなかった。
 どうやら腰がいうことを聞かないようである。5日目からの出場は微妙である。御嶽海はどうやら今場所は本気みたいである。気のせいか、顔つきが締まって見える。待てよ。この言葉は先場所も使っていたようである。もう2、3日見てからにした方がいいだろう。
 さて、それでは宇良の渾身(こんしん)の一番を振り返ってみよう。前回の対戦でもかなりの抵抗を見せていた宇良だが、今回はあまり無理をしないようにと祈るような気持ちで見ていたが、宇良は天下の照ノ富士をきりきり舞いさせた。内容はあまりよく覚えていないが、とにかくあの強い照ノ富士に一泡吹かせているのである。
 宇良はまるで水を得た魚のように生き生きと動き回り、やりたい放題。足を取ると見せかけたり、腕を引っかけ突然前に出たり、変幻自在の大暴れ。さすがの照ノ富士も手を焼いていたようだ。そして突然、宇良が攻めに転ずる。右を深く入れ、もろ差しから一気に寄って出る。これには照ノ富士も意表を突かれ、土俵際で棒立ちになるまで攻められる。まさに絶体絶命である。
 宇良は勝利を確信したかのようにがぶり寄りで攻め立てる。照ノ富士は足1本で残す。もうダメかと思わせたが、照ノ富士のすごいのはこれからであった。左で上手一枚引くと、一瞬のうちに反撃に移り、左から突き放すと宇良は吹き飛んだ。
 とにかく素晴らしい相撲だった。果敢に攻め続けた宇良の善戦は見事の一言に尽きる。それとあの奇襲を残し、最後まで勝利への執念を見せてくれた照ノ富士は立派としか言いようがない。記録の面ではまだまだ白鵬に及ばないが、精神面の充実は白鵬に勝るとも劣らない境地に達していると言っていいだろう。4日目は良い相撲を見せてもらった。
 それでは原稿の催促があったので終わることにします。感染者がすごいことになってます。皆さまもお大事に。(元横綱)
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