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がんばる コロナ禍を生きる<7> 変わらず元気 届ける

2022年1月13日 05時00分 (1月13日 09時44分更新)
カウンターでトランプマジックの技を披露する望月紳之介さん=浜松市中区の「手品家 浜松店」で

カウンターでトランプマジックの技を披露する望月紳之介さん=浜松市中区の「手品家 浜松店」で

 「手品家 浜松店」 オーナー望月紳之介さん
 「『あの』手品家です」−。二〇二〇年七月、浜松市内で初めて新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したマジックバー「手品家 浜松店」(同市中区)のオーナー望月紳之介さん(34)にとって、これが自己紹介の言葉となった。
 クラスター発生時、市の店名公表に先駆けて、従業員に感染者が出たことを自らツイッターで報告した。ネット上では「店やめろ」「浜松の恥さらし」などの心ない言葉を目にした。店は休業による経営難に直面した。再開のめども立たず、閉店も覚悟した。
 望月さんは元ホテルマン。お客さんが見せてくれた手品に感動し、この道を志した。マジシャンの働く場を守ろうと、同年九月に店を再開した。「よく頑張った」「クラスター発生後の対応、良かったよ」。常連客からはねぎらいの声を掛けられた。「温かい言葉が前進する一番の原動力になりました」
 だが、クラスター発生から約一年後の二一年八月、二度目の緊急事態宣言が県内に発令された。店も二度目の休業に入った。グループ店の「手品家 静岡店」(静岡市)は同月に閉店した。
 休業中、従業員はマジックの自主練習をしながら、再開の日を待った。「マジシャンは目の前で見てもらってなんぼ。お客さんの反応にどう返すかも大事。ただマジックがうまいだけではマジシャンではない」。モチベーションの維持に苦戦した。従業員は数人辞め、現在三人。全く違う道に進んだ人もいる。
 緊急事態宣言の解除を受け、十月に営業を再開。定員はコロナ禍前の半分、約二十人に抑え、手探りで営業を続けてきた。「貸し切り営業もできますよ」と積極的に提案するようになった。
 本来であれば、十二月の忘年会、一月の新年会の時期が一番の稼ぎ時。だが、「お客さんがゼロじゃなくて良かった」という日も少なくない。
 今また、変異株オミクロン株の感染拡大に、店は脅かされている。「クラスターを出さなかったら出会えなかったお客さんもいる。店を続けると決めたからには前向きに捉え、目の前のお客さんに楽しんでもらえるよう努めたい」。コロナ禍前には戻れないが、「あの」手品家は変わらず、浜松の街に元気を届けようと前を向く。
 文・広瀬美咲
 写真・斉藤直純
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