本文へ移動

<追う>移動可能な避難所に期待 災害備え平時からコンテナ活用

2022年1月10日 05時00分 (1月10日 20時36分更新)
今月オープン予定の「HOTEL R9 The Yardいなべ」。災害時には被災地などに運ばれる=いなべ市大安町石榑下で

今月オープン予定の「HOTEL R9 The Yardいなべ」。災害時には被災地などに運ばれる=いなべ市大安町石榑下で

 災害時に仮設住宅や避難施設などに利用できるよう、移動や運搬が可能なコンテナ型建築を平時から備える動きが広がっている。南海トラフ地震のリスクがある県内でも設置が進んでおり、平時は宿泊施設や店舗などとして活用する。発災時、迅速に被災地に届けられるのが利点で、長期の避難生活による負担の軽減も期待される。
 いなべ市を縦断する県道140号(通称ミルクロード)。工業団地に向かうトラックが多く行き交う幹線道路沿いに、黒いコンテナがずらりと並ぶ。正体は、今月オープン予定の「HOTEL R9 The Yardいなべ」。工業団地や高速道路へのアクセスに優れたビジネスホテルでありながら、非常時には自治体の要請に応じトレーラーなどで移送される。移送先ではライフラインの工事のみが必要で、三日ほどで供用可能という。
 コンテナ型建築メーカー「デベロップ」(千葉県市川市)が「レスキューホテル」と銘打ち、全国約四十カ所に千四百戸以上を展開。県内初オープンとなるいなべでは、ベッドやユニットバスなどを備えた十三平方メートルのコンテナを最大二人用の客室として、計三十二棟を提供する。
 全国七十三市町村と協定を締結しており、主に仮設住宅が建つまでのつなぎの避難施設としての利用を想定している。「プライバシーなども確保できるので、少しでも避難所生活の負担が和らげば」と同社担当者。医療拠点などへの転用も可能という。
 被災地ではかねて、避難所生活の過酷さが指摘されてきた。復興庁が二〇一二年にまとめた報告によると、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の三県では、震災後一年間であった災害関連死の約三割は、避難所生活などによる肉体・精神的疲労が原因とされる。対策として、高齢者などのより環境が整った避難所への移動や、仮設住宅への早期の入居などを挙げた。
 迅速な供給が可能なコンテナ建築は、こうした課題の解消に期待がかかる。一八年の西日本豪雨では、岡山県倉敷市は北海道の企業からコンテナ型の木造住宅四十戸を提供され、従来型より最大二週間ほど早く被災者が入居できた。市担当者によると、入居者からも「気密性が高い」「隣の住人の音が気にならない」と好評を博し、退去済みの一部は、二〇年七月の豪雨で被災した熊本県球磨村でも利用された。
 県内では、いなべ市や南伊勢町など四市町が、住宅メーカー「一条工務店」からコンテナ型の木造建築の提供を受ける予定。南伊勢町では、二階建て一棟と平屋建て二棟を高台の町立南伊勢病院の隣に建て、平時はワーケーション施設などに、非常時は災害対策拠点などに使う。同社によると、木造建築は断熱性や防音性に優れ、恒久住宅として数十年単位の滞在も可能という。
 課題もある。内閣府の想定によると、南海トラフ地震では県内で最大約六十九万人の避難者が出るとされ、コンテナでも現状では避難者の受け入れには限界がある。
 防災施策に詳しい三重大大学院の川口淳准教授は「高齢者や障害者など入居者の対象の限定が必要で、受け入れ側の自治体があらかじめ決めておくべきだ」と指摘する。
 設置先の確保も欠かせない。川口さんは「建物としてすぐに使えるよう、あらかじめライフラインが敷いてあるような場所の把握も必要」と話す。
 (尾林太郎)

関連キーワード

おすすめ情報

三重の新着

記事一覧