人工透析患者に適切な治療提示 静大院生がシステム開発に貢献
2022年1月9日 05時00分 (1月9日 05時02分更新)
静岡大学の佐野吉彦准教授の研究室が、人工透析患者の血液データを基に、適切な治療方法を提示するシステムを開発した。同研究室の佐藤健太郎さん(24)も開発に大きく貢献した。これまでは医師の経験や知見に頼っていた治療が、システムの活用で適切な治療方法を判断しやすくなり、患者の負担軽減が期待される。 (細谷真里、写真も)
同研究室が開発したシステムは、透析中の血液データをパソコンソフトに入力すると、患者の状態ごとに適切な透析時間や血液量、透析器などが提示される。
開発されたシステムの活用で、医師の治療方法の判断がしやすくなることが期待される。今回の研究成果を昨年十一月末にあった日本人工臓器学会の萌芽(ほうが)研究ポスターセッションで発表し、佐藤さんが最優秀賞を受賞。医療機器メーカーや病院から反響があり、機器の開発に向けた問い合わせが来ているという。
佐藤さんは佐野准教授の指導のもと、熱や物質の移動を扱う「輸送論」を研究。修士課程では、佐野准教授が導き出した人工透析の治療をすることで血中の毒素の濃度がどう推移するのか、患者ごとに正確に予測できるモデル式を活用。医師の治療アシストができるシステムの開発に乗り出した。
佐藤さんは、システムの作成・ヒアリングおよび改良の面で尽力。「医療現場の意見を聞きながら、現場で実際に使える形に持って行くのが大変だった」と振り返る。佐野准教授とともに「患者さんにとって適切な治療が分かれば、負担の軽減につながるのではないか」と願う。
佐藤さん自身は、四月から水処理業界への就職が決まっている。「三月まで、実用化に向けできる限りのことをしていきたい。後輩にも引き継ぎたい」と笑顔を見せた。
<人工透析> 食事や水分の摂取から体内に蓄積する余分な水分や塩分、老廃物を、うまく働かなくなった腎臓の代わりに取り除く治療法。専用の液体をおなかに入れ、老廃物や水分を取り込んだところで体外に取り出す「腹膜透析」もあるが、多くの人が選ぶのは「血液透析」で、血液を体の外に引き出し機械できれいにして体に戻す。週に三回通院し、一回四時間程度の治療が必要で患者の負担は大きい。
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