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<三河撮りある記>(104)新春の豊川稲荷

2022年1月11日 05時00分 (1月11日 05時00分更新)
 やわらかな陽光がさし込む豊川稲荷(豊川市)の台所「典座(てんぞ)寮」。新春の配膳場は、祈祷(きとう)に訪れた初詣客をもてなす精進料理の支度でごった返していた。

ずらりと並ぶ朱塗りのお膳に次々と用意される精進料理=豊川市の豊川稲荷で

 白衣姿の職員らが行き交い、料理を盛り付けたわんや小皿を手際良く朱塗りのお膳に並べていく。それぞれのお膳に十前後の器を整え終えると、「見事なものでしょう」と二十年近く配膳を担当している女性(75)は誇らしそうに笑った。
 料理は年間を通じ、祈祷を受けた参拝客への返礼として振る舞われている。魚や肉を使わず野菜や穀物が中心で、素材の味を生かして薄口に仕上げる。この正月は白米とみそ汁に、飛竜頭の煮物やもずく、ごま豆腐のほか、地元農家が奉納した大根で作った紅白なますなどがメニュー。祈祷の種類によっては野菜の天ぷらや果物なども付く。
 繁忙期以外は大豆を用いた、鶏の唐揚げ風やウナギのかば焼き風といった「もどき料理」がお膳に上ることも。「味も見た目も楽しんでほしい」と寮を切り盛りする僧侶の大崎利久さん(62)。季節ごとに異なる料理を提供できるようにと、寮の職員らと工夫を重ねている。
 精進料理は「点心」と呼ばれ、本来は空腹を少し満たすだけの「軽食」を意味する。ただ、稲荷では「昔から量にもこだわりがあるんです」と大崎さん。境内にまつる鎮守、豊川吒枳尼真天(だきにしんてん)が稲穂を担いでいることから「米をおなかいっぱいに食べて帰ってほしい」と、十年ほど前まで白米を山盛りにして提供していたという。
 参拝客から「多すぎる」との声を受けて量を減らすようになったが、現在も白米がふたから少しはみ出る程度に盛る。職員らは「地元の食材も多いので、残さずきれいに食べてもらえたら」と思いを込めている。
 昨年の正月は新型コロナウイルスの影響で精進料理の提供を自粛したため、二年ぶりの活気に包まれた稲荷の台所。お膳のにぎわいは、二月初めの旧正月まで続くという。
 (文・川合道子 写真・太田朗子)
 

 豊川稲荷 正式名は曹洞宗の「豊川閣妙厳寺」。境内の営繕などを担う直歳(しっすい)寮や来客を接待する知客(しか)寮などの部署があり、典座寮はその一つ。僧侶や職員約170人が働く。精進料理は4000円以上の祈祷で提供される。4月3日まで、名鉄全線1日乗り放題切符に祈祷、精進料理を組み合わせたお得なプランも販売されている。(問)豊川市観光協会=0533(89)2206

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