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不安も晴れた 児童施設卒業生、振り袖姿で成人式前撮り

2022年1月7日 05時00分 (1月7日 16時06分更新)
成人式の前撮りの記念撮影に臨む佐藤愛美さん(右)=12月、浜松市内で

成人式の前撮りの記念撮影に臨む佐藤愛美さん(右)=12月、浜松市内で

 諦めていた振り袖に腕を通すと、笑みを抑えることができなかった。県内の児童養護施設を二年前に卒業した大学二年、佐藤愛美さん(仮名、二十歳)は昨年十二月、市民団体「イチゴイニシアチブ静岡」が児童養護施設退所者を対象に開いた成人式の前撮りに第一号として参加。晴れ着姿で写真に納まり、頬を緩めた。 (高島碧)
 白地にオレンジが鮮やかな振り袖姿で施設の建物前に立つと、スタッフから「かわいい。すてき」と声が上がった。「撮られ慣れていないから照れる」とはにかむ佐藤さんは、里親の元で過ごした後、十七歳から一年間、県内の小規模施設で過ごした。「職員が一人一人の意志を尊重して、過ごしやすかった」と振り返る。
 ドイツ語を学びたいと、奨学金で愛知県の私大に進学。現在は県内で一人暮らしする。大学に進学する場合は二十二歳まで和光寮にいられるが、実家が経済的な負担を避けて延長できなかった。
 「入学した一年は新型コロナ禍で友達もできないし、単位を落とすかもしれない不安で、気持ちが押しつぶされそうだった」。生活費は飲食店のアルバイト代で賄うが、コロナの影響で勤務時間が制限されている。経済的な苦しさから精神的に不安定になることもあったという。「久しぶりに職員といっぱい話せて、気持ちが落ち着いた」
 入学後も、無料通話アプリLINE(ライン)でやりとりを続けていた職員から前撮りを持ち掛けられ、「せっかくなら」とうなずいた。鈴木さんは「施設を卒業し措置を解除すると金銭的な支援ができず、会うきっかけも無くなる。卒業して終わりではなく、晴れ着姿が見られてうれしい」と繰り返しシャッターを切った。
 佐藤さんは将来、ドイツ語の小説の編集に携わりたいと考えている。既に企業の就職説明会に参加しており「コロナで難しいけれど、留学したい」と前を見据えた。

◆子どもの「一期」有志で記念撮影

 「イチゴイニシアチブ」の名称には、一生を意味する「一期」にかけて生を全うしてほしいという思いが込められている。その活動は、二〇〇八年の秋葉原無差別殺傷事件がきっかけ。二〇一〇年、ファッションPRの自営業を営む東京都大田区の市ケ坪さゆりさん(54)が、「社会から疎外される人を生まないために」と始めた。首都圏の児童養護施設を対象に、毎年三十人の七五三や成人式の記念撮影をしている。
 一九年から富山、京都にも同じ活動をする団体が発足。「イチゴイニシアチブ静岡」は、二〇年六月に社会福祉士池島麻三子さん=浜松市浜北区=を中心に設立された。
 池島さんがイチゴイニシアチブの写真展を二一年三月に掛川市内で開いたことをきっかけに、有志のスタイリストやカメラマン、スクールソーシャルワーカーら五人が集まった。
 池島さんが施設三カ所に直接出向いたりメールを送ったりして活動を紹介し、和光寮が手を挙げた。
 池島さんは「この活動をきっかけに、施設の子どもたちと地域の交流が進むといい」と期待する。二一年度内に県内で今回撮影した写真の作品展を開く考えだ。

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