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社会の課題と解決策を見出す 「公立はこだて未来大式」PBLとは

2022年1月6日 13時00分 (1月6日 13時05分更新)

<連載・未来をつくる学校 #2>

 2000年に北海道函館市に開学した公立はこだて未来大は、中部9県の国公立大にはない情報科学系の単科大。自ら問題を発見し解決する力を養う課題解決型学習(PBL)を、全国に先駆けて02年から進めてきた。PBLが一部の学生や、短期間にとどまる大学が多い中、情報科学に特化して集まった技術や人材を駆使し、地域社会の課題と向き合う函館発「未来大」式とは―。(北村希)

5階まで吹き抜けの大空間。円形のプレゼンテーションエリア、自由席、研究室、教授の部屋が並ぶ=北海道函館市のはこだて未来大で


【はこだて未来大】地域単独の国公立大設置を目指した、北海道函館市と現在の北斗市、七飯町で2000年4月に開学。システム情報科学部のみの単科大。21年度は学部生1088人、教員69人。入学生は、道内133人、道外115人。授業料は年間53万5800円。主な就職先は、70%以上が情報通信業。22年度募集人員に占める総合型・学校推薦型選抜の割合は33%と、国公立大合計の22%を大きく上回る。

 

ITを駆使して地域の課題にアプローチ

 ガラス張りの五階建てキャンパス。モニター画面を前に学生五人が話し合う姿が、廊下側からも見える。「写真の横をそろえたいのに小さくなる」「(プログラミングの)コードが違うんじゃない?」。PBLで地域の高齢者に聞き取りをした結果、趣味や交流の居場所を見つけ、共有できる仕組みがないことに気付いた。数カ月がかりで高齢者向けアプリの開発に取り組み、アプリ画面のデザインで大詰めを迎えていた。
 別の教室では、電子部品や丸くかたどった樹脂を手に議論する学生が。大学食堂で手指の消毒や追跡アプリへの登録を呼び掛ける「店員ロボット」を製作するチームだ。
 

プロジェクト学習で「店員ロボット」の製作に取り組む学生ら=北海道函館市のはこだて未来大で

 

1年かけて全員が挑む

 未来大のPBL「プロジェクト学習」は、三年次に全員必修。四月に教員陣が「コミュニケーション脳科学」「デジタルヘルス」といった社会とつながる大枠のテーマを提示。学科やコースを横断した学生五~十五人と二人以上の教員でチームを構成する。課題と解決法を見つけ出し、十二月の成果発表会を経て翌一月に最終報告書を出す。
 
 学内の大半の教員が関わる体制で、地域や企業と連携するチームも。後輩へと引き継ぎ、発展させていくテーマもある。函館市公式の観光情報サイト、函館野外劇の予約サイト、入院患者がクイズや塗り絵をできるリハビリ用アプリなどは実用化した。市の名産イカを模した、踊るロボット「IKABO」は、函館港まつりを盛り上げる。

函館港まつりに参加するロボット「IKABO」と学生。ロボットのプロジェクトは代々引き継ぎ、改良が重ねられた=北海道函館市内で(はこだて未来大提供)

 

開放的なキャンパスで垣根のない学び 

 「社会は解が一つではない問題にあふれている。函館は少子高齢化、温暖化、漁業への影響、地方衰退など、日本が抱える社会課題の縮図のよう」。教務課の飯岡祐貴さんは、PBLの意義を語る。
 
 小規模な単科大だからこそ専門的な教員が集まり、特化した設備や対話重視の空間を用意できた。大学全体でITと地域課題をつなげる研究では、漁業者の感覚に頼ってきた水産業界で、水温や潮流の自動観測、漁獲量管理のデジタル化を進める取り組みが国内外から注目される。
 
 そんな環境は、中部の若者たちも引きつける。愛知県出身の三年、日置竜輔さんや修士一年の藤井駿さんは、学生や教員が垣根なく学ぶ吹き抜けの大空間を見回し、「皆同じ学部。分からないことは、いつでも誰にでも聞き合える」と誇らしげだ。

廊下側がガラス張りの教室。様子を眺めることで、さまざまな授業に興味を持ってもらうのが狙いだ=北海道函館市のはこだて未来大で


【PBL 東海の大学では参加者や期間 限定的】 PBLは、新学習指導要領で重視される主体的、対話的で深い学習「アクティブラーニング」の手法として注目を集める。東海地方では愛知県立大や愛知大、南山大、豊橋創造大などでも企業と連携したPBLに取り組むが、一部の学科や受講希望者、数カ月の期間にとどまるケースがほとんど。三重大は1年次の教養科目で半年間のPBLセミナーを開講するが、学科ごとに受け、ノウハウを学ぶのが主な目的だ。未来大のように一年を通して学科を横断した全員が受講し、成果を実社会に還元する学習は珍しい。同大のPBLは2006年度、文部科学省が「特色ある大学教育支援プログラム」事業に採択した。


【片桐恭弘学長からのメッセージ】
 開放的なオープンスーペースのキャンパスで身に付けたオープンマインド(開かれた心)を卒業後も持ち続け、情報科学の知識を基にこれからの社会をデザインしてほしい。プロジェクト学習で育まれた自律、協働、創造性を生かし、常に学び続けてもらいたい。

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