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がんばる コロナ禍を生きる<1> 居心地良い施設へ奔走

2022年1月6日 05時00分 (1月6日 11時00分更新)
笑顔で利用者に接する松田和久さん(左)=浜松市南区の特別養護老人ホーム「南風」で

笑顔で利用者に接する松田和久さん(左)=浜松市南区の特別養護老人ホーム「南風」で

 二〇二〇年初めに新型コロナウイルスの世界的な流行が始まってから二年。本紙は地方版で、笑顔や日常を取り戻そうと願う人の姿を「願(がん)ばる」と題して随時掲載してきました。新しい年の始まりに合わせ、コロナ禍で奮闘する人たちを訪ねました。
 浜松市南区・特養「南風」 社会福祉士の松田和久さん
 「まるで戦場だった。もうあんなことは起きてほしくない」−。通所を合わせて二百人以上のお年寄りが利用する特別養護老人ホーム「南風」=浜松市南区=の社会福祉士松田和久さん(46)は、昨年四月末に短期宿泊者の新型コロナウイルス感染が判明した時のことを振り返り、厳しい表情を見せた。
 宿泊者に発熱の症状があり、PCR検査で陽性が分かった。三日間で退院できたが、デイサービス事業は二週間止まった。入浴の介助やリハビリができず、「お年寄りのストレスも大きかった」。濃厚接触者はいなかったものの、関係する施設の全職員六十人の検査を実施。利用者家族や行政に状況を報告し、施設の管理責任を追及する匿名メールの対応にも神経をとがらせた。
 県によると、昨年九月までに県内の高齢者施設約三千六百カ所のうち、二百九十三カ所で新型コロナ陽性者が出た。利用者の陽性は四百五十八人で、職員は三百十八人。クラスター(感染者集団)に認定された施設は二十九カ所に上る。
 松田さんもこれまで、緊張の途切れない日々が続いた。在宅事業の統括管理者としての立場から、コロナで重症化しやすい高齢利用者の感染を防ぐため、関係者の感染が判明したときのマニュアル作りに奔走してきた。
 昨春の感染者発生時には、独自に職員の行動制限規則を設けた。利用者や職員、それぞれの家族が感染したり、濃厚接触者になった場合を想定し、三十通りの対応を考えた。職員は市外の移動を控え、同居家族以外との会食を制限した。
 利用者を守るため、家族との面会は、パソコンやスマートフォンの画面越しや、三メートル離れた位置でついたてを挟んだ状態でのみ許可をした。厳しいルールだったが、利用者家族から「(職員の)皆さんが倒れないようにして」「無理しないで」と温かい言葉を掛けてもらい、励みになったという。
 全国的に感染が拡大した時期には、感染予防のため、お年寄りたちは部屋で一人で食事をすることを余儀なくされた。その寂しそうな姿を見て胸が痛んだ。「利用者が笑顔になれる機会をつくりたい」と考えた。洗車や草むしりなどを地域住民から有償で引き受けるグループを立ち上げた。認知症予防のために、利用者に人生経験を話してもらうプログラムも新設した。「構想を練っている事業がたくさんある。コロナ禍だからこそ、お年寄りの居心地の良い施設にしたい」
 職員の行動制限や面会の規制は昨年十一月にいったん緩めたが、年末から変異株「オミクロン株」の感染が拡大している。「(規制を緩めた)この状況は長くは続かない」と考えている。利用者の命を預かる立場として「今後も、ウイルスを入れない。入っても施設で広げない」と気を引き締める。
 文・中田弦
 写真・袴田貴資

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