教え子につながったタスキ 31歳の今井隆生はこの箱根を最後に、再び学校の「先生」に戻る【満薗文博コラム・光と影と】
2022年1月2日 17時07分
◇2日 第98回箱根駅伝・往路(東京・大手町―箱根・芦ノ湖、5区間107・5キロ)
角刈りのランナーは、今風やや長髪の青年に、ポンと腰をたたいてタスキを渡し、5区山登りへと送り出した。そして、涙をあふれさせた。98回の歴史を誇り、現存する駅伝競走最古の「箱根」で演じられたこの一瞬のタスキリレーに、人生の驚きと輝きを見た。
2人に抜かれ、最下位で5区への中継点に現れた駿河台大の今井隆生は31歳の4年生。タスキを受けた永井竜二は3年生。埼玉の越生中学で、今井は保健体育の先生、永井はその教え子だった。時を経ての再びの巡り合いは奇遇だった。今井は心理学を中心に知識を深めようと、30歳にして「自己啓発等休業制度」を利用して同大学の3年生に編入した。越生中と駿河台大は同じ地区にある。生徒を引率しトレーニングの場として大学を使わせてもらい、徳本一善監督とは知り合いだったのも大きい。今井は、日体大時代に最初は陸上部、後にトライアスロン選手への道を選んだ。駿河台大への転入を機に再び陸上部に加わったことで、この日のタスキリレーが実現した。
運命のタスキはどこでつながっているか分からない。駿河台大が予選会を突破し、史上初めて箱根路へ足を踏み入れたこの年、陸上の神様が巡り合わせてくれたとしか思えない、かつての先生と生徒のリレーである。それも、繰り上げスタートまで、わずかに2分と少しの際どいタイミングでつながった絆のタスキだった。
現在31歳の今井は、この箱根を最後に、再び学校の「先生」に戻る。ささやかかもしれないが、一瞬の輝きが箱根路に残った。(スポーツジャーナリスト)
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