小惑星探査機の運用監督 JAXA 細田聡史さん(「空飛ぶクルマ開発」関連)

2020年1月11日 17時08分 (10月6日 12時34分更新)

「はやぶさ2」の運用について説明する細田聡史さん=神奈川県相模原市のJAXA相模原キャンパスで

日本の宇宙開発を行う宇宙航空研究開発機構(JAXA)で今最も注目を集めているプロジェクトが、小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星リュウグウの探査です。今回、同プロジェクトのスーパーバイザー(運用監督)という役割を担い、主動力となるイオンエンジンも開発した細田聡史さん(45)を中学生記者が取材。宇宙開発の最前線に足を踏み入れました。

「はやぶさ2」とリュウグウの模型の下で記者に説明する細田さん(左)

全身全霊で地上から指示

 「この部屋の場所を人に言ってはいけません」。そう念を押され、中学生記者4人は「はやぶさ2」の管制室を見学できるエリアに案内されました。教室ほどの大きさの部屋に3面の巨大モニターやコンピューターの数々。ここが数百億円の予算をかけた国家プロジェクトの中枢であり、細田さんの仕事場です。
 この日は、はやぶさ2が太陽の裏から顔を出し、本格的な通信を再開する日。現在の光通信技術では、往復の交信に約39分間を要します。「光の遅さを痛感する職場です」と細田さん。この時間差を頭に入れながら、探査機の次の行動を考え指示を伝えます。
 運用の正念場が、着陸して岩石などのサンプルを直接採取する「タッチダウン」。リュウグウの地表面が想定以上に凸凹していたため、昨年10月の予定が今年2月を第1候補に変更されました。狙った場所に狙った姿勢で着陸させるために、スーパーバイザーは経験とセンスを凝縮させ、39分前までに全身全霊を込めた最後の指示を考えます。宇宙に送り出せば、操作には制限ばかり。だからこそ、本番までの準備が最も重要なのです。

「はやぶさ2」を運用している管制室(一部画像処理)

宇宙のかなためざし研究

 リュウグウまでの32億キロもの旅を実現させたのが、とても燃費のいい新型イオンエンジンです。細田さんは2003年打ち上げの初代「はやぶさ」からエンジン担当として携わりました。初代が10年に奇跡的な帰還を果たして大ブームが起こり、その1年半後には、はやぶさ2のプロジェクトが正式決定。めざすリュウグウとの位置関係から推計すると、その時点で新型探査機の開発期間は3年もありませんでした。
 試験段階での故障など開発は難航。「できないと小惑星探査計画が閉じてしまう。大変なプレッシャーで、JAXAを辞めようかとも思いました」。開発のヤマ場では2週間まともな睡眠を取らず、眠っても実験をする夢を見るほど。食事も取らず、体重は1日1キロずつ落ちていきました。
 手塩にかけた、はやぶさ2はミッションの真っ最中ですが、視線はさらに宇宙のかなたへと向いています。次の目標は木星。木星より遠くへは太陽に頼らない動力が必要です。高校3年時にSFアニメを見て決意した「ワープするエンジンを作る」という初心を貫き、研究を続けます。「車や飛行機を造り活動範囲を広げてきたのが人類の歴史。それが宇宙になるだけ。僕は人類としての欲望に忠実なんです」。最前線にいながら限界をつくらない生き方に、記者たちは圧倒されました。(構成・宮崎厚志)

普段装着している無線機と、「はやぶさ2」の組み立てで使用したトルクドライバー

<これまでの歩み>
1996年  大学の航空宇宙学科を卒業
2003年  大学院の航空宇宙工学博士課程を修了
  07年  JAXA非常勤研究員に採用される
  11年  正規職員に採用される
  14年~ 宇宙探査イノベーションハブ開発員
<細田さんから>
 探査とは人間の活動領域を広げる仕事です。今は無人の月も、30年後には当たり前に人がいる場所になる。みなさんにはぜひその先の道を歩いてほしい。科学や宇宙開発はメーカーや大学もしているし、JAXAには理系以外の職員も多くいます。
<2019年1月20日掲載>

関連キーワード

PR情報

お仕事ファイルの新着

記事一覧