漢和辞典編集 KADOKAWA 坂倉基さん(「雑誌編集者」関連)

2020年2月22日 00時00分 (10月6日 13時03分更新)

「親字表」と呼ばれる手書きの漢字リストを確認する坂倉基さん=東京都千代田区のKADOKAWAで

 漢和辞典を使ったことがありますか。漢字の意味や読み方、使い方、成り立ちなどを知りたい時に役立つ辞書です。五十音順に言葉が並ぶ国語辞典とは異なり、調べたい漢字の読みや部首名、画数を頼りに引くのが特徴です。漢和辞典の編集の舞台裏を知ろうと、中学生記者が取材に行ってきました。

頼れる一冊 作る誇り

 訪れたのは、昨年十月にロングセラーの「角川新字源」を二十三年ぶりに改訂したKADOKAWA。改訂に関わった五人の編集者の一人坂倉基さん(36)から「実は、改訂作業に約十年かかりました」と聞き、記者たちは時間の長さに耳を疑いました。
 今回の改訂では、編者と呼ばれる漢字の専門家三人が、従来の記載内容のチェックや追加分の原稿執筆を担当。収録する漢字も一万字から一万三千五百字に増やしました。パソコンやスマートフォンの普及で、人々が使う漢字が増えたのが一因です。「例えば薔薇。書けないけど読める人も多いよね。しかも、漢字変換すればコンピューター上で誰でも使える」と坂倉さんは言います。
 編集者の仕事は、編者が執筆の際に参考にする資料をそろえたり、編者から届いた原稿を確認して読みやすい文に書き換えたりすることです。「どうすれば使いやすいかを考え、別の専門家の助けも借りながら、原稿をよいものに磨き上げます」
 原稿の最初の手直しを一通り終えると、辞典と同じレイアウトで印刷。その後はそれを見ながら事実確認や修正を続けます。一回目の印刷を初校と呼び、印刷のたびに二)校、三校と数字が増えます。
 一般書は三校くらいで終わりますが、今回の改訂では可能な限り修正し、最後の印刷を意味する「念校」は六校目でした。「辞典は調べものに使われるので、間違えられないという思いがより一層強いんですね」

原稿磨き上げ、改訂に10年

 改訂新版は千九百六十八ページと厚く、すべてのページに目を凝らすのは気が遠くなる作業です。実際に原稿執筆に最初の三、四年、原稿を手直しする校正作業に六、七年を費やしました。
 確認すべき内容が多いのが大変でした。「時に編集者も辞典の解説を裏付ける資料を調べます。一字の意味を知るために、本一冊を読んだこともある」と苦笑い。だからこそ、完成時は言い表せないほどの感動や達成感がありました。
 今回の改訂で一部の漢字に新しい読みが加わったように、昔の文献の発掘、解明などで進んだ研究の成果も多く盛り込みました。
 仕事の楽しさを聞くと、「人々の表現のよりどころになる物を作っているという思いが、やりがいにつながっています。生活に欠かせない文字や言葉を専門に扱えるすてきな仕事だと思います」と坂倉さん。凜と語る表情から、辞典編集に対する誇りを感じました。(構成・那須政治)
<これまでの歩み>
2005年 大学院在学中にKADOKAWAの関連会社の出版社に就職
  08年 別のKADOKAWA関連会社の辞書編集部に転籍し、「角川新字源」の改訂作業を担当
  17年 新字源の改訂新版を出版。今後も辞典が仕事の中心に
〈坂倉さんから〉 
辞典の内容はあくまで一つの見解や基準です。ある考え方だけを正しいと決めつけず、多くの考え方を知った上で、何が正しいかを考えられる人になってください。
〈2018年1月21日掲載〉

坂倉さんから辞典の表紙選びの話を聞く中学生記者たち=東京都千代田区のKADOKAWAで

昨年、23年ぶりに改訂された「角川新字源」。外箱と表紙がそれぞれ異なる2種類を販売中です=東京都千代田区のKADOKAWAで

「新字源」の初校から念校までの原稿=東京都千代田区のKADOKAWAで

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