手話通訳者 田中美樹さん(「同時通訳者」関連)

2020年3月7日 00時00分 (10月6日 13時04分更新)

ヘッドセットを装着して電話の話を手話で通訳する田中美樹さん=名古屋市中区の桜華会館で

 聴覚障害者が使う手話は、「視覚言語」と呼ばれる言葉です。日本語を話す周りの人たちと意思が通じ合うよう、毎日の生活に通訳者が不可欠です。中学生記者たちは、あいち聴覚障害者センター職員で、手話通訳者の田中美樹さん41を取材しました。

聴覚障害者の会話手助け

 あいち聴覚障害者センターを訪れた中学生記者に、田中さんは通訳を実演してくれました。センターの窓口で、聴覚障害者が会議室を予約するという設定です。日時の希望や手続きの説明などのやりとりを、日本語を聞きながら手話で伝え、手話を見ながら日本語で言います。スピードと集中力が肝心です。「通訳者は黒子。自然に会話が成り立つよう気を配ります」
 通訳には資格が必要です。資格は二つあり、都道府県から認定される「手話通訳者」と、厚生労働省から認定されて活動する「手話通訳士」。手話通訳士は政見放送や多くの裁判を担当します。
 田中さんは愛知県に登録し、市役所などから依頼を受けて派遣される手話通訳者。三年前、手話通訳士の試験にも合格しました。「裁判の通訳は、人生を左右する仕事。経験を積み、いつか担えたらいいです」
 今は、同センターで働く聴覚障害者宛ての電話や来訪者の話を通訳。ほかに、病院での診療や、授業参観などの学校行事、講演会の通訳など幅広く活動しています。愛知県の広報番組に出演するほか、映像にパソコンで字幕をつけるなどの仕事が増えているそうです。
 「正解がない仕事。毎回、これで良かったかと悩みます」。医師の説明なども理解しなければならず、いろいろな勉強が必要です。「インスタグラム」といった新しい言葉がどんどん生まれるため、練習も欠かせません。
 最も印象深い仕事は、二〇〇五年の愛・地球博)閉会式。政財界のトップを前に、司会者や首相のスピーチを通訳する大役を務めました。「緊張でひざが震えました」

黒子として人と人つなぐ

 手話を始めたきっかけは、社会福祉を学んでいた大学生時代に「役に立つかも」と、近所の手話講座に通い始めたことです。「コミュニケーションをとることができて楽しく、手話が大好きになりました」
 センターの園田大昭所長と一緒に、中学生記者に名前やあいさつなどの簡単な手話を教えてくれました。「聞こえない人と雑談して笑えたり、仲間が増えたり。手話ができることで貴重な体験もできます」と田中さん。センターは手話講師の派遣も行い手話の普及に努めています。「聞こえない人の社会進出が進み、通訳の需要は増えています。でも本当は、みんなが手話ができ、通訳者が要らない社会になってほしいです」
 聴覚障害者の生活に寄り添い、支える大切な仕事でした。(構成・今村節)
<田中さんから>
いろんなことに関心を持ち、失敗しても次はがんばろうと思える人が向いています。主婦が多く男性は少ないです。市役所や企業に雇われて働く人もいます。
<これまでの歩み>
1999年 大学卒業、ソフトウエア会社に就職
2001年 退職し、国立障害者リハビリテーションセンター学院に入学
  03年 同学院卒業、愛知県聴覚障害者協会に就職
  15年 あいち聴覚障害者センターに配属
<2018年3月18日掲載>

通訳を実演する田中さん(右)。聴覚障害者の園田大昭・あいち聴覚障害者センター所長と窓口担当者の会話をサポートした=名古屋市中区の桜華会館で

「こんにちは」。田中さんから手話を教わる中学生記者たち=名古屋市中区の桜華会館で

お仕事道具。手話の辞書やパソコンのほか、電話を通訳する時に使うヘッドセットも=名古屋市中区の桜華会館で

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