調香師 資生堂 森下薫さん(「美容師」関連)

2020年3月14日 00時00分 (10月6日 13時11分更新)

香料が付いた「におい紙」をかいで香りを確認する森下薫さん=神奈川県横浜市西区の資生堂グローバルイノベーションセンターで

記憶と想像で魔法の配合

 香水やシャンプー、リップクリームなど身の回りにある製品の香りをつくるのが調香師です。お客さんが使う状況や、何を求めているかを想像しながら香料を配合する姿は、まるで香りの魔術師。小学生記者が、資生堂の調香師森下薫さん(52)を取材しました。
 調香師の最初の仕事は香りの記憶です。主に使うのは、ローズ、シトラスといった天然香料が約100種類、ムスク、アンバーなどの合成香料は約150種類。多いときは100種類の香料を混ぜるため、それぞれの香りを知らないとどんな香りになるか想像できません。
 最終的には数百種類を覚えます。森下さんは「カブトムシの酸っぱいにおい」「歯医者さんのにおい」など、自分の思い出と組み合わせて記憶したそうです。
 今の時期、気になるのが汗のにおいです。森下さんが香りの力で解決する方法を示してくれました。まず、汗のにおいの成分を分析して「汗臭」を作成します。次に、汗臭に香料を配合していい香りをつくります。その香りから汗臭を取り除き、制汗剤などに配合しておくと、実際に汗臭が出た時のいやなにおいが防げるわけです。
 びんに入った汗臭をかいだ記者は「うっ」と顔をしかめましたが、森下さんが香料をかけると、さわやかな香りに変化しました。まさに魔法のようです。
 森下さんは入社するまで調香師という仕事を知りませんでした。「薫」という名前だったので、調香師にぴったりだと上司に選ばれたそうです。
 バラの香りの香水をつくるためにフランスまで行ったことも。1週間、花のにおいをかいで回り、一番いい香りのバラでつくったのが「クレ・ド・ポー ボーテ シナクティフ」の「ローズシナクティフ」です。

時代を映す香りつくる

 服装と香りの流行の移り変わりには関連があるそうです。バブル景気真っ盛りの1980年代は肌を露出した格好をする人が多く、異性の気を引くような甘い香りが人気でした。バブルがはじけた後の90年代はシンプルな服装がはやり、さわやかな香りがもてはやされました。
 多様性を楽しむ人が増えた現在は、ナチュラルな香りが受けているそうです。「香りは時代を映す鏡。あの時代の香りだよね、といわれる香りをつくりたいですね」
 ヘアケア製品「TSUBAKI」には特別な思い入れがあります。生きる気力を失っていたという人から「ツバキの香りをかいで、生きていてよかったと思いました」と手紙が届いたためです。「香りには落ち込んだ人を奮い立たせてくれる力があるんだと知りました」。記者たちも香りの不思議な力にすっかり魅了されました。(構成・石川由佳理)
 <森下さんから>
 香りを一つ一つ覚えていくのは地道な作業で、とても大変です。根気強く、香りが好きという情熱を持ち続けられる人じゃないと続きません。嗅覚は人並みの方がお客さんの気持ちがよくわかります。
<これまでの歩み>
1992年 東北大大学院でアワビについて研究、修了後に資生堂入社
  96年 香料産業発祥の地のフランスやドイツ、スイスなどで研修、本格的に調香師として歩み始める
  97年 香りが特徴的なヘアケア製品「ティセラ」の香りづくりに携わる
2006年 担当したヘアケア製品「TSUBAKI」が大ヒット
  10年 担当した制汗デオドラント製品「シーブリーズ」が大人気に

森下さんを取材する小学生記者ら=神奈川県横浜市西区の資生堂グローバルイノベーションセンターで

森下さんがこれまで開発に携わってきた商品の一部=神奈川県横浜市西区の資生堂グローバルイノベーションセンターで

汗臭がさわやかな香りに変化したのを確かめる記者=神奈川県横浜市西区の資生堂グローバルイノベーションセンターで

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