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工場に息づく鳥の楽園 愛知・半田の豊田自動織機遊休地「バードピア」に

2021年12月25日 16時00分 (12月25日 17時56分更新)
池の近くに設置されたセンサーカメラに映ったチュウサギ=愛知県半田市の豊田自動織機東知多工場で(豊田自動織機提供)

池の近くに設置されたセンサーカメラに映ったチュウサギ=愛知県半田市の豊田自動織機東知多工場で(豊田自動織機提供)

  • 池の近くに設置されたセンサーカメラに映ったチュウサギ=愛知県半田市の豊田自動織機東知多工場で(豊田自動織機提供)
  • センサーカメラに飛び掛かってくるオオタカ=愛知県半田市の豊田自動織機東知多工場で(豊田自動織機提供)
  • バードピア上空に飛来したチュウヒ。英語名はトヨタの車種名にもなっている「ハリアー」=愛知県半田市で(高橋伸夫さん提供)
  • 野鳥の飛来状況を確認する高橋伸夫さん(中央)と豊田自動織機の社員ら。手前が雨水を利用してつくった池=愛知県半田市の豊田自動織機東知多工場で(安藤孝憲撮影)
 トヨタ自動車グループの豊田自動織機が、ディーゼルエンジンを生産する東知多工場(愛知県半田市)の遊休地を使い、野鳥が羽を休めるための「バードピア」整備を進めている。生物多様性を守る活動として地元の専門家と二年前に始め、水鳥や猛きん類など希少種を含む四十九種の飛来をこれまでに確認した。ものづくりの現場のすぐそばで、豊かな生態系が育まれつつある。 (安藤孝憲)
 十一月中旬、工場南東角の用地を訪ねた記者の頭上をタカの一種のチュウヒ(絶滅危惧種)が翼を広げ飛んでいった。活動を担う同社環境部の深川有夏さんによると、工場屋根にとまり、獲物をじっと探すような姿が目撃されることもあるという。他の小型の鳥を狙っている可能性が高いが深川さんは「それも含め、多様性なので」と話す。
 バードピアは鳥と楽園(ユートピア)を組み合わせた造語。約二万平方メートルの用地は水気が多く建物を建てるのには不向きな場所で、長年未利用のままだった。
 整備は最低限にとどめ、伸び放題だった外来植物を刈り取った他は、雨水を利用して池をつくった程度。助言した愛知県野鳥保護連絡協議会議長の高橋伸夫さん(71)=同県西尾市=は「これで十分。水辺にはトンボやカエルがすみつき、小型の鳥のエサになる。やがて大型の鳥が狩り場として覚え、生態系のピラミッドはよみがえる」と話す。
 工場が立地する衣浦湾一帯は元々、臨海工業地帯として一九七〇年代にかけて県が造成した埋め立て地。程よい陸地ができたことで水鳥などの群れが飛来しやすくなり、多くの種が観察できると愛好家に知られた場所だった。対岸の同県碧南市の鉄鋼メーカーに長年勤めた高橋さんは「夜勤明けに、たくさんの鳥の鳴き声に包まれるのが楽しみだった」と振り返る。
 だが工場進出が増えて遊休地が減るにつれ、鳥の姿は見られなくなっていった。看過できないと動きだしたのが、衣浦湾一帯に拠点を置くトヨタグループ各社。二〇一〇年に名古屋市で生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)が開催されたことを契機に、自然との共生を重要テーマに掲げるようになっていた。
 豊田織機も高橋さんに相談し、一九年秋にバードピア整備を開始。池の近くにセンサー付きのカメラを設置し、これまでに絶滅危惧種のハヤブサや準絶滅危惧種のオオタカ、チュウサギなどの飛来を確認した。
 来年度には簡単な遊歩道を整備し、近隣住民に見学してもらう考え。大武憲生工場長は「この地でものづくりに携わる会社として、生態系も含む地域のあるべき姿を考えたい」と話す。

トヨタG各社で取り組み

 トヨタ自動車グループは、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出ゼロ)など脱炭素化への取り組みの他に、生物多様性の保全も重要な責務に掲げている。衣浦湾一帯に工場を構えるグループ各社は以前から野鳥保護に取り組んできた。
 ジェイテクトは二〇一五年冬から田戸岬工場(愛知県高浜市)の一人の従業員の呼び掛けで始まった水鳥のコアジサシ(絶滅危惧種)の誘致と営巣環境整備を続ける。地元の西三河野鳥の会が協力し、一七年からはトヨタ自動車衣浦工場(碧南市)、アイシン半田工場(半田市)も活動に加わった。従業員の家族や住民を招き、観察会や個体数調査を続けている。

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