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正直「そっちか!?」槙野智章投入に思ったが修羅場知る男は違った あの1発は必ず浦和のリーグ制覇に結び付く【月刊ラモス】

2021年12月25日 06時00分

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浦和―大分 後半終了間際、決勝ゴールを決め雄たけびを上げる浦和・槙野

浦和―大分 後半終了間際、決勝ゴールを決め雄たけびを上げる浦和・槙野

 劇的な幕切れで大いに盛り上がった今年の天皇杯決勝。誰も想像しなかった劇画チックな浦和DF槙野智章(34)の決勝ヘッドに対し、「月刊ラモス」のラモス瑠偉・編集長(64)は「この1発は近い将来、必ず浦和レッズのリーグ制覇に結び付く」と予言した。ロドリゲス監督(47)の下、大きな変革を遂げつつある浦和。その課題と成果が凝縮された大分との決勝戦、そして浦和レッズの現状を、ラモス編集長が徹底解説する。
【月刊ラモス】
 最後の最後、浦和と大分の意地のぶつかり合いが、とてつもないドラマを生み出した。大分が後半45分にパワープレーから同点ゴールをたたき込み、このまま延長戦突入かと思われた最後のワンチャンスで、槙野が劇的な決勝ゴールをヘッドでたたき込んだ。まさに筋書きのないドラマ。試合終了のホイッスルが鳴るまで何が起こるか分からないという、サッカーの醍醐味(だいごみ)を凝縮したような幕切れに、5万8000人近い大観衆は酔いしれた。
 ゲームの流れを見ると、もし延長に突入していたら大分がものにしたのではないかと思う。浦和は1点リードで迎えた後半38分、MF小泉に代えて槙野を投入した。大分のパワープレーに対抗するための守備固めだ。この時、私は正直「そっちか!?」と疑問に思った。
 大分は準決勝の川崎戦でも延長後半のパワープレーから劇的な同点ゴールを決め、PK戦の末に決勝に進んでいる。高さを生かした攻撃はど迫力。いいクロスを入れられると、防ぐのは難しいだろうと感じていた。
 パワープレーに対抗するには2つの方法がある。一つはロドリゲス監督が選択したヘディングの強い選手を入れて、高さではじき返す方法。もう一つは、前線か中盤に生きのいい選手を入れて、ボールに対してプレッシャーをかけ、いい形でクロスを上げさせない方法。結果論として、逃げ切り策は裏目に出て失点。その上、小泉、MF関根という攻撃の核となる選手を守り固めの際に引っ込めている。延長までもつれ込むと、厳しい戦いを余儀なくされただろう。
 しかし、この非常事態に、ピッチの中で全く違うことを考えている男がいた。槙野だ。延長の「え」の字も頭の中にはない。残りわずかな時間で、決めにいったのだ。これこそ数々の修羅場をくぐり抜けてきたベテランの真骨頂。誰かに指示されたわけではない。槙野自身が決断した最善の戦い方。決めるつもりの選手のところにボールは集まるもの。CKの跳ね返りをMF柴戸がダイレクトボレー。その弾道の先に槙野の頭があった。
 今季、浦和は大幅な若返りを図った。このところ低迷が続き、今季もスタートダッシュで出遅れた。その後、一気に世代交代を進め、シーズン前からの積極補強に加え、シーズンに入ってからもFWユンカー、DF酒井の大型補強、J2水戸のMF平野ら才能豊かな若い選手を獲得し続けた。大幅な血の入れ替えを行った結果、リーグ後半にはMF阿部、DF宇賀神、槙野のいない、全く新しいレッズが戦っていた。
 世代交代とともに、ロドリゲス監督はショートパスを軸にしたボールを素早く動かすサッカーを浸透させ、守備に関してもハードワークを求めた。奪われたら奪い返す。奪ったら素早く展開して相手ゴールに迫る。その戦術は徐々に浸透し、後半の盛り返しにつながったのだが、同時に課題も浮き彫りになった。
 若い選手が多くなった分、経験値が足りない。ゲームの中で、チームとしてどう戦うのか判断できる選手がいない。リーダー不在の弊害は、極端な内弁慶という形で表れた。今季、浦和のアウェーでの成績は6勝5分け8敗(勝ち点23)。上位8位までの対戦成績は2分け5敗。ホームの12勝4分け3敗(勝ち点40)と比べると極端に弱い。
 ちなみに川崎はアウェーで12勝5分け2敗(勝ち点41)。横浜Mはアウェーで11勝3分け5敗(勝ち点36)。その数字と比べると一目瞭然の内弁慶ぶり。相手に主導権を握られると、試合の流れをなかなか変えられないし、変える選手がいない。
 リーグ終盤、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の来季出場権獲得の可能性があったために勝たなければならない鹿島戦は力負け、清水戦はよもやのカウンター2発で沈んだ。力はつけているが、勝負弱い。だからこそのリーグ戦6位だった。
 そして天皇杯。引退する阿部にタイトルを―を合言葉にチームが驚異的な結束力を見せた。準決勝のC大阪戦では退団の決まっていた宇賀神が強烈なミドルシュートを決め、そして決勝では槙野が決めた。大事な試合での集中力、判断力、決断力。これぞ経験豊富なベテランのなせる技だ。
 中でも槙野の1発は、浦和がリーグ優勝するための大きな財産となった。そのベテランは来季、神戸に移籍するが、レッズに足りない経験値を上げるため、ACLは絶好の舞台だ。リーグ戦とは違う修羅場。厳しい日程、移動、アウェーの洗礼。その戦いの中で、ゲームを仕切ることができる選手、ゲームから逃げることなく最後まで戦える真のチームリーダーが生まれるかどうか。来季か、それとも2年後か、それは分からない。しかし近い将来、浦和レッズは間違いなくリーグ優勝を争う位置にポジションを上げてくるだろう。
 月刊ラモスも今回が今年最後となりました。世の中、コロナが収まらず、オミクロン株という未知なる脅威も出現しています。それでも、明けない夜はないと信じ、ポジティブに来年をよりよい1年にしていきましょう。それでは皆さん、メリークリスマス。そしてよいお年を。(元日本代表)

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