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紋切り型の質問のひとつ…「追った後の飼い葉食い」が地味でも意外に重要なわけ【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年12月24日 06時00分

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有馬記念に出走するエフフォーリア

有馬記念に出走するエフフォーリア

 ◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 有馬記念に向けた1週間はスポーツ紙において競馬が1年で一番、幅を利かせる1週間だ。普段は馬券を一切買わないけれど、有馬記念だけは買うという人も多い。せっかく有馬記念が幅を利かせている紙面を1週間読んでいただくのだから、競馬当日の紙面だけでなく、それ以前の、細かい調整過程を報じる紙面もよく読んで参考にしていただきたい。日刊紙競馬記者の日ごろの願いである。
 木曜や、場合によっては金曜は、G1出走馬に「追い切った後の様子」を尋ねることがしばしば。紋切り型の質問のひとつだが、重要なものに「追った後、カイバ食いはどうですか?」というものがある。馬によっては強い調教負荷を受けて食べなくなってしまう。
 速い時計で走らせるトレーニングは、駆動系の筋肉に負荷をかけて鍛えるというのも重要な意味合いだが、筋肉に蓄えられたグリコーゲン(エネルギー源としての炭水化物の一種)をいったん消費させるという役割もある。
 一般に、追い切りの後は飼料の性質を切り替える。乾草など、盲腸での発酵を経ないと栄養とならない粗飼料を減らして、エン麦など、小腸から直接取り込みやすいエネルギー源に富んだ濃厚飼料を増やす。
 粗飼料は発酵槽である盲腸にたまる。水と一緒にため込むので、実はこれが結構重い。発酵槽の重量で20キロ近く増えることもある。これでは斤量をそれだけ余分に背負うのと同じだ。
 濃厚飼料へのシフトは、この部分を減らすと同時に、追い切りで枯渇した筋中グリコーゲンを再補給。この時、適切な運動負荷によってハイレベルな枯渇状態をつくっておくと、追い切り前より多くのグリコーゲンを筋中にため込むことができる(リバウンド効果)。
 人では運動負荷直後の食事でリバウンド効果が最大になることが知られているが、競走馬では様子が若干異なり、グリコーゲン再補給には3~4日かかる。ただし、この再補給はもちろん、追い切り後に濃厚飼料をきちんと食べてくれないと実現しない。金曜や土曜の紙面にしばしば載る「追った後食べていますか?」という陣営への質問は、一見地味だが、意外に重要なのだ。

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