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 「私の病気を難病指定して」  成人して助成なくなり医療費高額に  

2021年12月21日 05時00分 (12月21日 12時33分更新)
 私の病気を国の難病に指定してほしい−。患者数が極端に少ない全身性肥満細胞症を患う名古屋市の女性(20)が、署名活動を続けている。頻発する重いアレルギー反応、アナフィラキシーショックに苦しむ日々。高校生だった発症当初は、子どもの難病として医療費の助成を受けられたが、成人した今は高額の薬代が重くのしかかる。希少疾患の医療費支援は、小児から成人への橋渡しが進まないことが課題となっている。 (編集委員・安藤明夫)

高い壁へ署名活動


 超希少難病疾患と闘う 外村潮美さん(20)



 昨年八月から署名を集めているのは、同市緑区の外村潮美(とのむらしおみ)さん。高校入学後から発熱や全身に突然現れる紅斑、体の震えなどに悩まされるようになった。
 二年に進級した春、コンピューター断層撮影(CT)で背骨に不審な影が見つかり、藤田医科大病院(愛知県豊明市)へ。検査前日に血圧が急降下して意識不明になった。入院中、一時は全身の痛みで、寝返りも打てなかったという。
 病理検査で診断がついたのは二カ月後だ。全身性肥満細胞症のアグレッシブタイプだった。体形の肥満とは無関係。免疫の病気で、同タイプの患者は国内に数人いるかどうかだ。骨髄内の肥満細胞が異常に増え、そこから放出されるヒスタミンが重いアレルギー症状を引き起こしていた。
 大変だったのは、学業との両立だ。朝、病院で点滴を受け、母親のいづみさん(45)の車で学校に行っても「途中で体調が悪くなって病院に戻ることもありました」。出席日数ぎりぎりで卒業にこぎ着けた。
 症状を抑えるのに欠かせないのが、白血病治療に使われる抗がん剤の一種。月額約十五万円にもなるが、子どもの難病として小児慢性特定疾病の指定を受けている骨髄線維症と症状が重なるため、申請して全額助成を受けることができた。
 しかし、事業の対象は原則十八歳未満。引き続き治療が必要でも、十九歳までとされる。医療費の自己負担がほぼない国の難病に指定されるには、関係学会からの申請や厚生労働省による審査など長い時間が必要だ。小児慢性特定疾病は児童福祉法に基づき、患者や家族をサポートするのが目的。一方で、指定難病は難病医療の施策全般を定める難病法が根拠で、新規登録のハードルが高い。
 成人になった今、抗がん剤にかかる費用は、所得や年齢に応じて患者の自己負担に上限を設ける高額療養費制度だけが頼り。「指定を目指し、患者側も動きたい」と始めた活動は、署名サイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)=「外村潮美」で検索=を活用し、これまでに三万六千余人の協力を得た。目標の十万人を達成したら国に提出する予定という。
 活動開始直後、名古屋大病院小児科で骨髄移植手術を受け、肥満細胞は大幅に減った。ただ、アナフィラキシーショックがなくなることはなく、今年一年だけで十二回も入院した。
 「病気が治ったら、大学に進んで馬術部に入るのが夢」という外村さん。「署名にどれだけ効力があるかは分からないけれど、一人でも多くの人に知ってもらいたい。同じように希少疾患で苦しんでいる人たちの力になれるかも」と言う。
 同大病院の主治医の一人、村松秀城さんは、全身性肥満細胞症の実態を調べようと、全国の病院へ問い合わせを始めた。国が指定する難病は増えている。ただ「新たな概念の疾患、まれな疾患は指定が得られにくい。患者さんが困っている状況はもどかしい」と話す。

科学の進歩に 矛盾する制度

 現在、小児慢性特定疾病の指定を受けている疾患は788。両方にまたがっているものも多いが、指定難病は半分の338だ=表。

 このことが、医療費支援の面で小児から成人へのスムーズな移行を妨げている。小児の希少疾患に詳しい名古屋市立大医学研究科の斎藤伸治教授(新生児・小児医学分野)は「希少疾患の多くは小児期に見つかり、新薬は高額なものが多い。成人になって支援が打ち切られたら、生活が破綻してしまう」と話す。
 「遺伝子診断技術など科学の進歩とともに、制度が抱える矛盾はより大きくなっている」とも言う。例えば「発達遅滞」の総称で扱われることが多かった子どもの障害だが、代謝やビタミン欠乏などが原因の病気と分かれば小児慢性特定疾病として医療費助成の対象となりやすい。治療の研究も進む。
 だが、同じ病気で、既に成人している患者がどの程度いるかを調べるのは困難だ。「治療法がなく早くに亡くなったり、障害者として福祉のサービスを受けていたりすると、診断の機会がない」と説明。その結果、「指定難病に追加するための根拠が得られにくい」のだという。

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