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リワークプログラムは心の支え 広がる導入、放火の医院でも 

2021年12月20日 16時00分 (12月20日 16時00分更新)
放火殺人事件があった大阪・北新地の雑居ビル前を歩く人たち=20日午前

放火殺人事件があった大阪・北新地の雑居ビル前を歩く人たち=20日午前

  • 放火殺人事件があった大阪・北新地の雑居ビル前を歩く人たち=20日午前
  • 取材に応じる日本うつ病リワーク協会の五十嵐良雄理事長=東京都千代田区で
 二十四人が犠牲となった大阪・北新地の雑居ビル放火殺人事件の現場となった心療内科クリニックでは、休職している人の職場復帰を支援するリワークプログラムと呼ばれる心理療法を取り入れていた。火災当日は多人数が参加のため来院していたとみられる。職場の環境を再現するリワークは再休職を防ぐ効果が高いとされ、治療に取り入れる医療機関が増えている。
 「ここに来るまで仕事が本当につらかった」。十九日、火元の「西梅田こころとからだのクリニック」が入るビル前で、昨春から通院しているという男性会社員(42)が花を供えた。男性は個別診療の他、週の終わりにはリワークに顔を出し、その週にあったことを話した。たいてい四〜八人の参加者がいて、胸の内を明かしていると気持ちが楽になったという。
 リワークは、復職を意味するリターン・トゥ・ワークの略語。実施医療機関でつくる「日本うつ病リワーク協会」によると、二〇〇八年に前身の団体が発足した際に約三十だった会員施設数は、今年七月時点で二百二と大幅に増加した。火災現場になったクリニックも入会している。
 うつなど気分障害の場合、復職後に症状が悪化して再度休職となる人も多く、実際の職場環境を模して複数人で課題に取り組むリワークで復職できるか見極めるのが有効とされる。
 同協会の五十嵐良雄理事長が院長を務める「メディカルケア虎ノ門」では、症状が落ち着いて復帰を考えられるようになった人が週二〜五回のペースで参加。週四日以上のグループではテーマに沿った記事を書き、新聞を作るなどの作業を二十五〜三十人で行う。参加者間で役割分担し、話し合うなど実際の職場に近い環境に身を置くことで、医師の診察で分からない傾向が見えることもある。
 厚生労働省の調査では、今の仕事に強い不安やストレスを感じていると答えた労働者は54・2%と高水準で、ここ数年間は半数超で推移。理由は「仕事量」や「失敗、責任の発生」などが挙がっている。仕事が原因でうつ病などの精神障害を患い、二〇年度に労災認定されたのは六百八件で、二年連続で過去最多を更新。新型コロナウイルスの流行でリモートワークが広がり、社員が悩みを打ち明けづらい環境になっているとの指摘もある。
 職場のメンタルヘルス問題を巡り、国は、過労自殺の増加などを背景に、〇〇年には職場におけるメンタルヘルス指針を策定。それ以降も労働者の職場復帰支援の手引を作ったり、労働者が五十人以上いる事業所に年一回の「ストレスチェック」を義務付けたりするなど、毎年のように施策を打ち出してきた。リワークはこうした状況下で発展した。
 五十嵐理事長は「うつで悩む人は減っておらず、リワークを必要とする人や企業はますます増えるのではないか。プログラムを行う場所にはどうしても人が集まるので、安全策を考える必要がある」と話した。

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