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<Meet STEAM> 「世界一」の星空ショー開発 プラネタリウム製作者・大平貴之さん

2021年12月19日 05時00分 (12月19日 05時00分更新)
大平貴之さん

大平貴之さん

  • 大平貴之さん
  • 2016年11月、種子島宇宙芸術祭プレイベントで、洞窟内に1000万個の星を投影=鹿児島県南種子町で(大平技研提供)
 業界の常識を覆した百万個もの星の投影、直径約百四十五メートルのドームの天井に映し出す星々のショー。個人としては例のない本格的なプラネタリウム開発を皮切りに、大平貴之さん(51)は世間を驚かす製品や企画を生み出し続けている。「星空を見上げて地球環境に思いをはせてほしい」と製作に打ち込む。 (聞き手・白井春菜)
 −どんなプラネタリウムを作ってきましたか。
 小学四年のとき、夜光塗料を紙に塗り、直径五ミリの円形に切り取ってオリオン座の配置で自分の部屋の壁に貼りました。電気を消して星座が浮かび上がった時の感激が原点です。同じ頃、地元のプラネタリウムに通い始め、動く星空を自分も作りたくて。星の位置に穴を開けた厚紙を筒状にし、豆電球にかぶせた「ピンホール式」を小学五年で完成させました。
 次は、よりくっきりと星を映せる「レンズ投影式」への挑戦です。星に相当する穴を開けた原板を三十二枚のレンズで拡大して投影する仕組み。レンズを通った光の屈折や原板のどこに穴を開けるかの計算、目に見えないほど小さな穴を正確かつ大量に開ける技術も必要で、アマチュアには難しい。大学では機械工学を学びながら一人で開発を続けました。電子回路の知識やコンピューター操作の習得なども必要ですが、授業との両立が難しく、一年休学して専念することに。大学三年の時に完成させ、学園祭で披露しました。
 −レンズ投影式を改良し、「世界一」と言われるまでに。
 メーカーに勤めながら、業務とは関係なく、百万個以上の星を映すレンズ投影式を作りました。当時の一般的な投影数は数千個。国際プラネタリウム協会のロンドン大会で実演して驚かれました。独立後の二〇〇五年、愛知万博サテライト会場で作品を上映。そこで映像を自動で調整するコンピュータープログラムを開発した経験が、後にプロジェクターを使う「デジタル式」の開発につながった。今まで、演劇の舞台、巨大なドームの天井、洞窟などさまざまな場所で投影してきました。
 −学生時代にもっとやっておけば良かったと思った勉強は。
 英語です。学問でも仕事でも、自分の世界を広げる上で避けては通れません。プラネタリウム製作では天文学、電気・機械工学やプログラミング、星の位置を計算する数学も欠かせません。僕は数学は得意ではないし、コンピューターの知識もなかった。必死で本を読み、詳しい人に助けてもらいました。
 −新型コロナ下、家庭用プラネタリウムの需要が高まりました。なぜプラネタリウムを作り続けるのでしょう。
 宇宙から地球を眺める視点を持ち、人間がやっていることを考えるきっかけになるのはプラネタリウムではないかと。僕は東日本大震災と原発事故を機に、地球環境やエネルギーのことを真剣に考え、人間は今のままでは地球上で長くは生きていけないとの思いに至りました。環境問題への意識は高まっています。星空を見上げ、なぜ地球を守らなければならないのかを考えてもらえたらと思います。

 おおひら・たかゆき 1970年、川崎市生まれ。日本大生産工学部卒、同大大学院理工学研究科修了。大学在学中の91年、個人としては例のないレンズ投影式プラネタリウムを開発。ソニーを経て2005年にプラネタリウム製作会社「大平技研」を設立。今年8月、セガトイズと共同開発している家庭用プラネタリウム「ホームスター」シリーズで、星の瞬きを再現した新製品を発売。


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