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ウマ科学会の研究発表が常識覆した!前肢が推進力を生む馬もいる?【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年12月17日 06時00分

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◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 例年、ジャパンCの直後は馬に関連する学術的な関係者にとって重要な時期にあたる。JRAは「競走馬に関する調査研究発表会」を開催し、日本ウマ科学会は年に1度の学術集会を開く。2年前までは両者は同一会場で同時開催していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、昨年、今年と、動画配信開催などで難局をしのいでいる。前者は11月29日に、後者は今月10日までに、予定のプログラムを終了した。
 もともと酒飲みの多い業界だけに、年に1度集まって腹を割って話すというイベントがないのは正直寂しい。それでも学術集会では科学の目が、それまでの常識に風穴を開けることがしばしばあって面白い。今年、個人的に最も驚いたのは馬の駆動力の源に関する運動力学の研究だった。
 「走行時の馬に駆動力を与えるのはもっぱら後肢である」というのは、馬を専門的に扱う科学者や多くの厩舎人にとって常識だ。科学における根拠は圧力板を設置した走路で駆け足着地時の力のデータが取られている。ところが、JRAにおける馬のバイオメカニクスの第一人者、高橋敏之さんのウマ科学会での研究発表は、この常識を覆した。
 高速度撮影による画像解析で駆け足より一段高速走行の襲歩(ギャロップ)を解析すると、一部で前肢の着地で加速しているように見える馬が見つかった。JRAの実際の競走の撮影で芝23頭、ダート29頭を解析したところ、芝で7頭、ダート10頭で前肢のみが着地している時間帯の加速度が、後肢のそれとほぼ同等に記録された。そのほか、ストライド長などフォームの差異によって、この加速について多角的に検討したが「前蹄着地時に加速している馬がいる」との結論を導いている。
 同時に、これらフォームを多角的に解析した内容から、前肢による加速は「固体が持つ固有の特徴」と、考察している。前脚で加速できる馬もいれば、できない馬もいるということだ。
 前肢で加速できることと、例えば「ダートの巧拙」「能力の絶対値」などとの関係はまだ分かっていないが、そもそも「前肢が加速に資する」ということが、実は大発見だ。今後の発展的研究が大変興味深い。

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