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渡り鳥バンを岐阜大にもう一度 学生らが生息地保全の試み

2021年12月15日 05時01分 (12月15日 16時56分更新)
渡り鳥のバン=3月、岐阜市内で(日本野鳥の会岐阜会員・大塚之稔さん提供)

渡り鳥のバン=3月、岐阜市内で(日本野鳥の会岐阜会員・大塚之稔さん提供)

  • 渡り鳥のバン=3月、岐阜市内で(日本野鳥の会岐阜会員・大塚之稔さん提供)
  • 池の生態系を守る活動をする中藤さん(右)ら=岐阜市柳戸の岐阜大で
 半世紀近く前、岐阜大の敷地内にある池で繁殖する姿が見られた渡り鳥のバンの生息環境を取り戻そうと、学生らが立ち上がった。この池を含む湿地帯ではその昔、キャンパス移転の話が持ち上がり、当時の学生らが保存に奔走したが、最近は放置状態だった。「バンが帰ってくるための一歩を踏み出したい」。活動の中心になる応用生物科学部四年の中藤(なかとう)駿さん(22)は期待する。(都沙羅)
 大学北部にある堤防沿いの約二万平方メートルの池は、鳥の名にちなんで「バンガ池」と呼んで親しまれてきた。中藤さんが所属する環境サークル「G−amet(ジャメット)」のメンバーら三十人は、水質悪化によって荒廃したヨシなどの植物を復活させようと池の泥から種子をすくい、発芽させようと試みている。
 池の存在を授業で知り、なぜ荒れてしまったのか、どうしたら以前の環境に戻るのかを二〇一九年から調べてきた。コロナ禍を経て具体的に動き始めたのは本年度から。「岐阜市ではもう見られない水草もある。昔のデータが頼りです」。種子が発芽したら、池の水草帯を復元したいという。
 この池ではかつて、バンの集団繁殖が確認されていた。ところが、池を含む湿地帯に一九七一年、現在の柳戸キャンパスの移転案が浮上した。これに学生らでつくる「生物科学研究会」と日本野鳥の会岐阜が池の生態系保全を訴えた。大学側に要望書を提出し、自然保存地として残すことが決まった。
 ただ、堤防工事で土砂の流入が進むと、池の水位は次第に低下。バンの生息に適したヨシなどは消え、八二年にはバンの姿が見られなくなった。
 この研究会で活動を率いたのが、当時農学部(現応用生物科学部)四年だった日比博史さん(62)=三重県桑名市=だった。仲間を巻き込んで池の清掃や植生の調査をし、保全計画を大学に提案した。それでも、卒業後は活動が続かず、池は放置され、ヘドロがたまった。
 学生も訪れなくなり、最近は一部の職員が調査を続けるのみだった。日比さんは当時を振り返り「大学が保全すると決めた池が、どんどん荒れる姿に『本当にそれでいいのか』と感じていた」と鮮明に記憶する。中藤さんらの活動を知り、「いつか誰かが注目してくれるかもしれないと思っていた」と喜ぶ。
 池の再生を通して、キャンパス全体が自然保護の拠点になることも願う。中藤さんは「後輩や中高校生も興味を持ってもらえる活動にしたい」と目を輝かせる。

 バン クイナ科の渡り鳥で体は黒っぽく、体長は30センチほど。池や河川、農耕地に生息し「クルルッ」という声で鳴く。年に数回繁殖し、先に生まれた若鳥が次のひなの世話をする習性が知られている。県内では美濃地方の湿地に生息し、飛騨地方では少ない。全国鳥類繁殖分布調査によると、水田のほ場整備などの影響もあり、1970年代以降、分布数が減少傾向にある。

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