本文へ移動

「新庄は代表的なアホ」は私のノムさんへの最後の質問に対する今生最後の答えだった!【竹下陽二コラム】

2021年12月13日 11時26分

このエントリーをはてなブックマークに追加
野村克也さんをしのぶ会

野村克也さんをしのぶ会

◇生涯一野村番がつづる「ノムさんジャーニー」その19
 ノムさんが天から舞い降りた。先日、2020年2月11日に亡くなった野村克也をしのぶ会が、神宮球場で開かれた。開場前の午前10時頃、神宮に向かう途中のベローチェで仲のいいライターとお茶した。と、そこで、とっくに引退していたヤクルト球団フロント幹部と遭遇した。そして、20年以上ぶりに会う私に開口一番、冗談交じりにこう言った。
 「香典やお供え物は固く辞退するということらしいけど、竹下クンは、野村本書いてるし、いろいろお世話になってるから、なんか持ってった方がいいんじゃないの? ふふふ」
 そう言うと、先を急いでるようでニヤリと笑いどこへやら消えた。ヤクルト担当時代、ノムさんに「お前は、オレに足を向けて寝られん。なんか持ってこい」と同じようなことを言われいじられた。そのシーンを何度も目撃した元フロント幹部は、私の顔を見るなり、きっと、当時のことを思い出したのだろう。
 ノムさんの言葉が、時空を超えて、フロント幹部の口から出てくる不思議。私は、ノムさんと再会できたような気がしてうれしくなった。
 会場でのもう一人の主役は、日本ハムの新監督、新庄ビッグボスだった。報道陣に囲まれた新庄ビッグボスはときおり、ノムさんの声色もマネながら「ボクが監督になって、一番驚いているのは、野村さんでしょう。去年、トライアウトを受験したとき『代表的なアホや』と言われたぐらいですから…」などと話した。
 新庄は代表的なアホ。実は、あれは、私がノムさんにした最後の質問で、ノムさんの私への最後の答えだった。亡くなる前年秋、トークショー後に控室で会った。そこで、私は2つ質問した。一つ目は、薬物中毒から再起をはかる清原さんについてだ。「清原?自分で自分の首を絞めとるな」と悲しげな目をした。清原さんは、巨人の桑田コーチと並び、将来、プロ野球の監督になり、球界を担う人材と期待していたから残念さがにじみ出た。
 続いて、1年後、トライアウトを受けて、現役復帰を目指すと表明した新庄について聞いた時の答えが「代表的なアホや」だった。この時、ノムさんは、ふふふとかすかに笑った。続けて何か言おうとしてやめた。その後の言葉は、今となっては、永遠のナゾ。間髪入れずに突っ込めば良かったのだが、お疲れのようで次の質問はやめた。また、次、会ったときに聞けばいいと思ったからだ。私の悪い癖だ。次は来なかった。アホの頭に愛すべきとか可愛いがついたのは、間違いない。
 このアホ発言を各紙が報じることになって、それを読んだのだろう。その記事をニヤリと笑いながら、読む新庄ビッグボスの様子が目が浮かぶ。今や、現役復帰どころか、監督だから、ノムさんも腰を抜かすだろう。阪神監督時代に新庄に二刀流をやらせたとき、「固定観念は悪。先入観は罪」と言い続けたノムさんも今ごろ、天国で「そう来たか!オレこそ固定観念にとらわれてたな」と地団駄を踏んでいるに違いない。
 ヤクルト監督時代、「地位が人を作る」とノムさんが言った言葉が予言にも聞こえる。新庄ビッグボスが日々、監督らしくなっていくからだ。そして、ノムさんはこうも言っていた。「監督ちゅうもんは、敵と戦う前に、自軍と選手と戦い、勝たないとダメなんや。この人に付いて行こう、この人に付いて行けば勝てる、と思わせたら、こっちのもんや。ナメられたらおしまいや」と。
 新庄ビッグボスもパフォーマンスしながら今、必死で選手と戦っているのだと思う。旅には続きがある。これから、時折、天から下りるノムさんの声を道しるべに、新庄ビッグボスを見詰めていこう。そう誓って、思い出の詰まった神宮球場を出た。見上げると、雲一つない、澄み切った冬の空が広がっていた―。
おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ