ずれないズボン、ケッ作できた 滋賀のケアマネ、高齢者らの悩み解ケツ
2021年12月11日 16時00分 (12月12日 10時28分更新)
腰の曲がった高齢者や車いす利用者らのはくズボンがずれ落ちる悩みを解決しようと、滋賀県東近江市のケアマネジャー小林秀子さん(55)らがボランティアでズボンを手作りしている。グループ名は「半ケツにならないズボンの会」。斬新な名前と確かな腕で、ひそかな人気を集めている。
きっかけは三年前の夏、小林さんが在宅介護の訪問先で受けた相談だった。腰が曲がっていて、歩行器を使う八十代女性のズボンが脱げかかり、お尻の割れ目が見えていた。家族から「この悩みを解消するようなズボンが売ってない」と打ち明けられた。
別の高齢者からも同様の相談があり、「何とかならないかな」と、ケアマネジャーの古市久美代さん(61)や、小林さんが母親を担当している島沢いく子さん(71)らと解決に動き始めた。
島沢さんの提案で最初に着目したのは、股上(またがみ)がゆったりしたもんぺ。小林さんが試作して高齢者にはいてもらったところ「股上の前の部分はこんなにいらん」「ゴムは緩くしてくれ」などの感想が寄せられた。
これまでに六十本を製作し、着用してもらいつつ改良を重ねた。先月に最新作が完成。股上の後部は長めにしつつ、前部はその半分にした。腰回りのゴムは、握力が弱い人でも上げ下げできるように弱めのものを使った。色合いは尿漏れしても目立たないよう、濃緑など深い色にした。
製作を依頼した市内の女性(63)と母親(88)は「体に合うズボンがなく、今まで既製品を妥協してはいていた。ありがたい」と感謝。母親は細身だが、腰が曲がっているため、今まではLかLLサイズをはかざるを得なかったという。
ケアマネ歴三十年以上の小林さんは「介護や福祉の現場では『半ケツ』と呼ばれ、みんなずっと困っていたのに、長年こういうものだと思い込んでいた」と反省しつつ、「ケアマネの仕事は問題の解決にある。はいてくれた人の喜ぶ顔が見られるのはうれしい」とほおを緩める。
古市さんも「いつも三人で楽しく作っている。裁縫のプロはいないけど、ズボンは根性と知恵の塊。困っている人にもっと周知していきたい」と意気込む。
ズボンは毎週木曜の午後六〜九時、同市今崎町の福祉センター「ハートピア」で製作している。材料費(二千円以上)のみ必要。裁縫作業や生地、活動費の提供者も募っている。問い合わせは同会=電050(3552)3399=へ。
(斎藤航輝、写真も)
おすすめ情報