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北陸道幅寄せ死 懲役6年 金沢地裁判決 危険運転を認定

2021年12月8日 05時00分 (12月8日 10時07分更新)
判決後、無言で金沢地裁を出る本松宏一被告=7日、金沢市丸の内で

判決後、無言で金沢地裁を出る本松宏一被告=7日、金沢市丸の内で

  • 判決後、無言で金沢地裁を出る本松宏一被告=7日、金沢市丸の内で
 石川県白山市の北陸自動車道で二〇一九年五月、乗用車で幅寄せし、三輪バイク「トライク」の男性を死なせたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)などの罪に問われた金沢市鳴和町、JR西日本社員本松宏一被告(44)の裁判員裁判の判決が七日、金沢地裁であった。大村陽一裁判長は、危険運転致死罪が成立するとして、懲役六年(求刑懲役七年)を言い渡した。
 判決は、追い越し車線にいた被告が、通行車両のドライブレコーダーの映像などから、走行車線にいた三輪バイクの直前に、ウインカーをつけず、法定速度を超える時速約百十四〜百三十キロで幅寄せしたと認定。車一台分もない距離だったとして「被害者は驚きや恐怖とともに、衝突を避けるためにとっさに急ハンドルを切らざるを得ないのは明らかだ」と指摘した。
 被害車両が走行車線に入ると一転、急加速して走り寄った点、安全に車線変更するだけの余裕があったのに接近した点を示し「バイクの安全な通行を妨げる可能性を認識しながら、あえて危険な接近をしたと強く推認できる」と、妨害目的があったと結論付けた。
 量刑の理由で「全く落ち度のない被害者の尊い命を奪うという取り返しのつかない結果をもたらした。このような危険で悪質な運転行為におよんだことは強い非難に値する」と断じた。
 被告の行為が過失にとどまるか、危険運転が成立するかが争われ、危険運転の条件となる走行を妨害する目的で、著しく接近する行為があったかが焦点だった。
 判決によると、白山市の北陸道で乗用車を運転中、会社役員黒川敦愛(あつよし)さん=当時(76)、大阪府高槻市=のトライクに著しく接近。左に急ハンドルを切らせてガードレールに衝突させ、外傷性心破裂で死亡させた。
 本松被告は、家族で商業施設に向かう途中だったという。勾留はされておらず、法廷の外に出てきた被告は報道陣の問い掛けには応じなかった。JR西日本は「社員に対して今回の判断がなされたことは、重く受け止めなければならないと考えている。皆様方に深くおわび申し上げる」とコメントを発表した。

「妨害」主観的側面 客観的証拠 積み重ね判断

 被告に通行を妨害する目的があったか、なかったか−。主観的な側面が強い事実の立証が争点になった裁判だった。
 過失犯罪・交通犯罪に詳しい日本大の船山泰範元教授(刑法学)は「行為者の気持ちの問題を映像解析を基にした客観的証拠を積み重ねることで、十分判断できるということを示した」と評価した。
 裁判員は、ドライブレコーダーの映像など客観的な証拠を基に「著しく接近した」という事実認定を明確にした上で、妨害の目的について検討。「(被告が)妨害の可能性があると認識していたことが、強く推認される」と導いた。
 船山氏は「主観的な問題の立証についての判断方法を示した。同じような事案についての判断に影響が出るのではないか」と解説。ドライブレコーダーの普及とともに、映像などの客観的証拠が事件の立証で一層、重要視されていくとも指摘した。
 判決は、量刑の理由の中で今後の妨害運転の抑止の観点も踏まえた。船山氏は「今回の事件は裁判員裁判において身近な安全を求める国民の良識が示された」と総括した。(村松秀規)

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