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1人の選手を守ろうとする組織と莫大な利益をもくろむ組織。闇深いオリンピック【満薗文博コラム】

2021年12月3日 16時52分

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五輪マーク

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 僕らはこの夏、とても身近に「オリンピック」を感じた。良くも悪しくも、思い切り味わった。コロナ禍全盛のオリンピックが忘れられることは無いだろう。秋が過ぎ、冬に入った今も、その後味を、ある人は「うーん」と眉をひそめ、ある人は「何はともあれ、東京オリンピックが日の目を見てよかった」と話す。だが、これだけは言える。開催されたことに対する「功と罪」は、この後、時を重ねても綿々と語り継がれることになるのだろう。取りあえず、コロナ禍で行われたオリンピックは「功罪」の結論を先延ばししたまま、取りあえず新しいページへと進んだ。
 だが、少しの安堵(あんど)の後で、突然に新たな火種が現れるや、またしても「オリンピック開催の是非」が問われてもおかしくないような事態になった。2022年北京冬季五輪が、闇に包まれる事態になっている。2020年代初頭の東京はコロナに見舞われ、続く北京は1人の中国女子テニス選手、彭帥(ホウスイ)さんが放った強烈なスマッシュに揺れることになった。
 概略、ダブルスで世界ランキング1位になったことのある彭帥さんが、かつて、前の副首相に性的関係を強要されたことをSNS(短時間で削除された)で暴露。以降、行方が分からなくなっているという「事件」―。
 いち早く、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は、彼女とテレビ電話したが元気だったと公言した。だが、未だに彼女が公式なメディアの前に現れることはない。
 一方で、女子プロテニス界のトップWTA(女子テニス協会)サイモン会長は、彭帥さんと直接連絡がとれないことを明かし、強烈な一打を放った。「今後、中国国内で予定されていた大会(19年は世界最多の9大会)をすべて取りやめる」というものである。このことは、協会の大変な減収を意味するが、それでも、1人の女子選手を守るためと、1歩も引かない構えである。
 バッハ会長の「ごり押し」には、もはや驚かない。舞台を提供する東京―日本の世論などお構いなしに、ほとんど無観客となった東京五輪をごり押し―強行開催した人である。今回、いち早く、彭帥さんとテレビ電話で話し、無事と元気を確認したとされるが、それ以上の詳細は伝わって来ない。あえて言わせてもらえば、会見―彼女の言葉の真偽をもっと知りたいところである。
 「オリンピック開催の意義」が尊くないとは言わない。だが、オリンピックは、回を重ねるごとに闇もまた深くなっている。開催国側は莫大(ばくだい)な金を使って名誉を得、IOC側もまた豊富な財を手に入れるのが、現代のオリンピックである。
 闇の中で、WTAは大損をするかもしれない覚悟を選択し、IOCはあくまでも莫大(ばくだい)な利益をもくろむ構図である。
 新聞社の現役時代、喜々としてオリンピック取材に出向いたころが懐かしい。そして、闇の深くなったいまはどこか肌寒い。
(スポーツジャーナリスト)

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