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夢に出てきた『1910年の生がき』 あれを食べていたら阿炎は照ノ富士に勝ったのだろうか【北の富士コラム】

2021年11月28日 12時01分

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照ノ富士(右)が押し倒しで阿炎を下す

照ノ富士(右)が押し倒しで阿炎を下す

◇27日 大相撲九州場所14日目(福岡国際センター)
 昨夜は夢を見ました。夢はよく見る方なのですが、たいがい朝になると忘れてしまいます。ところが昨夜のヤツはあまりにも荒唐無稽で、しかも同じ夢が二度も出てきました。
 内容はわりあい、よく覚えています。老人が一人出てきて、私に阿炎に勝たせたかったら「これを食え」と言い、手に持っていた袋の中身を見せました。それは何? と私が開くと、これは1910年にオイル漬けした生がきだというのです。気味が悪いので、おれは嫌だよと断りました。そこで目が覚めました。
 変な夢を見たな、と思ったらすぐに眠ったと思います。するとまた老人が出てきて「おまえがイヤなら阿炎に食わせろ」と言うのです。生が嫌なら焼いてもいいとも言います。
 そんなことできるわけがないと再度断ったら目が覚めました。いくら夢とはいえ、とんでもない夢を見たものです。どうして1910年が出てきたのか、思い当たることがあるはずもありません。111年前のかきのオイル漬けがどうして出てきたのでしょう。
 何だか気味が悪い夢だったので、地下1階のオイスターバーがあるので食べに行こうかと思いましたが、ばかばかしいのでやめました。もし食べて阿炎が勝ったらとんでもないことになりそうで、今現在でも結びの一番が気になって仕方がありません。ひょっとすると頭がぼける前兆じゃないかと心配です。
 テレビでは幕下下位の相撲が続いていますが、私の気持ちは既に結びの一番に向いています。一生懸命な力士諸君には申し訳ないが、結びの一番に至るまでの相撲は「やってるな」程度に見えるだけであった。私の気になるのは結びの一番のみ。ついにお待ちかねの大一番が始まる。あっという間に制限時間いっぱい。いつもより仕切り時間が短くはないか? 初顔の対戦だけに、立ち合いが特に興味深い。
 さあ、軍配が返った。両者、見事に呼吸が合った立ち合いである。阿炎が連日変わらずもろ手突きで照ノ富士の胸を目がけて突進する。対する照ノ富士も堂々と受けて立った。
 両力士、精根こもった見事な立ち合いである。阿炎の突っ張りが照ノ富士ののど元に当たると、照ノ富士の腰が少し落ちかけた。おそらく予想以上の強さを感じたに違いない。阿炎はかさにかかって回転の速い突っ張りを浴びせ、照ノ富士を土俵際まで攻め立てる。この流れは私も予想外のものであった。
 盤石を誇っていた照ノ富士が俵に足がかかるほどに追い詰められている。正直、私はこのまま阿炎が突き倒すと思った。だが、照ノ富士はこのピンチにも全く慌てることなく左足一本で残すと、右で阿炎の左腕を抱え込んだ。阿炎は思わず出足を止めて引いてしまった。というよりもう一度離れて突っ張ろうとしたのだろう。
 照ノ富士はこの瞬間(とき)をのがさず攻め返すと、足のそろっていた阿炎は腰から崩れ落ちてしまった。攻守ところを変えるとはこのことだろう。守勢になりながら、相手のわずかなスキに乗じる反応は見事としか言いようがない。
 攻めた阿炎は大魚を逃し、誠に惜しいことをした。敗れて悔いなし。立派な一番であった。照ノ富士は窮地に陥りながらも、あくまでも冷静であった。勝負後のインタビューにも、淡々と表情も穏やかに質問に答えていた。今や押しも押されもせぬ立派な横綱だ。「最善を尽くすだけ」。その言葉通りの見事なまでの勝負であった。
 それにしても、あの夢。もし私が夢の中で生がきを食べていたら、阿炎はあのまま勝ったのだろうか。断って食べなかったのがよかったのか。いまだに変な気分である。気は確かか? 北の富士!(元横綱)
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