絶体絶命に見えた照ノ富士の土俵際は作戦 新横綱場所から2場所連続優勝は59年ぶり5人目快挙【九州場所】
2021年11月27日 20時02分
◇27日 大相撲九州場所14日目(福岡国際センター)
強烈な阿炎(27)=錣山=の突きに、左足は徳俵にかかった。上体もやや起きている。絶体絶命に見えたが、照ノ富士(29)=伊勢ケ浜=の胸の内は違った。「勢いを止めるのに(上体を)伸ばさないといけない。自分が伸びないと、相手も伸びない」。窮地は自ら誘い込んでのものだった。
右腕で相手の左腕を抱え、勢いを完全に止めた。前日から阿炎の相撲を映像で研究。狙い通り、ここから反撃に出た。阿炎は必死に肩透かしを仕掛けてきたが、圧力で最後は押し倒した。2場所連続、6度目の優勝を、千秋楽を待たずに決めてみせた。
横綱白鵬(現間垣親方)が引退し、番付上でも一人横綱になった。看板力士として重圧を一身に受けるが、不動心が揺らぐことは決してなかった。「一日一番の気持ちで全部、受けて勝つという気持ちでやりました」。正々堂々と迎え撃つ。「体のことを考えても、いろんなことができる体ではないんで」。しっかりと受け、そして前に出る形を貫き、14戦全勝とした。
今場所を見ると、爆弾といわれる膝の状態がいいとの見方もある。だが、実際は違う。間垣部屋時代から一緒で、家族のような付き合いをしている呼び出しの照矢は「みんな良くなっていると見ているけど、良くはなってないんです。うまく付き合っている」と言う。
照ノ富士は照矢に「けがに気を付けて」と声を掛けてもらい、相撲に向かうのがルーティンとなっている。照矢は「もちろん勝ってほしいけど、(それよりも)けがをしないように。願うことしかできないですけど」と語ったように、最大の敵(けが)はいつ襲ってくるか分からない。そんな状況で横綱の責任を果たしている。
新横綱場所から2場所連続優勝は、優勝制度が制定された1909年以降では、62年初場所の大鵬以来で59年ぶり5人目の快挙となった。次に見据えるのは、自身がまだ成し遂げていない全勝優勝だ。「そう簡単にできることではない。できるうちに、チャンスがあればつかんでいきたい」。年4度の優勝で大関、横綱へと一気に駆け上がった2021年。最後は全勝Vで締めくくる。
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