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福井の酒気帯び2人死傷事故から1年  検察控訴断念「心折れた」 危険運転主張 認められず 娘を亡くした父 怒り吐露

2021年11月27日 11時35分 (11月27日 11時42分更新)
事故が発生した現場=福井市花月2で

事故が発生した現場=福井市花月2で

 福井市内で酒気帯び運転の乗用車がパトカーの追跡を受けた末に軽乗用車に衝突し、軽乗用車に乗っていた大学生の男女二人が死傷した事故から二十七日で一年となる。娘の塩崎里桜(りお)さん=当時(18)=を亡くした父の治さん(55)=三重県=は、今も気持ちの整理がつかない日々を送る。刑事裁判では、検察側が危険運転を主張したものの認められず、乗用車の運転手は懲役五年六月の実刑判決が確定した。「悪質な飲酒運転事故だったのに納得がいかない」と怒りを吐露する。 (成田真美)
 「ずっと時が止まったような感じ」。高校の卒業式で笑顔を見せる里桜さんの写真を手にした治さんの表情は硬い。裁判で事故のことを「覚えていない」と繰り返した運転手への怒りも収まらない。
 明るい性格の里桜さんは、いつも友人に囲まれている娘だった。化粧品開発の仕事に就きたいと昨年春に福井大工学部に入学し、三重県内の自宅を出て五月末から福井市内で一人暮らしを始めた。福井の冬を初めて迎える里桜さんのためにと、治さんがこたつを届けたのが事故の一カ月前。三日前には年末の帰省のことで連絡を取り合った。それが最後になった。
 大学に通えたのは半年ほど。それでも通夜には百人ほどの参列があり、福井から足を運んでくれた人も多くいた。「半年間でこんなに友達になれるのか」と、治さんは驚きを隠せなかったという。納骨は一年たった今もしていない。「墓に入れたら独りぼっちになる。かわいそうなことはしたくない」
 裁判では、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪が成立するかが争われた。しかし、福井地裁は、より法定刑の軽い同法違反(過失運転致死傷)罪を適用。判決から二週間後、福井地検は判決を覆すのは難しいとして控訴を断念した。治さんは「加害者寄りの判決」と受け止める。
 危険運転の成立条件を定めた条文の解釈はあいまいな面があり、想定外の悪質な運転による事故が起きるたびに、被害者の署名活動などを受けて関係する法律が改正されてきた。治さんは「被害者が大変な労力をかけて運動しないと改正されないのはおかしい」と訴え、法律の専門家が改正へのかじを取るべきだと考える。飲酒運転の撲滅に向けた厳罰化も求めている。
 刑事裁判が終わって二カ月。「控訴審まではいくと思っていた。検察が控訴を断念し、心が折れた」。今後のことはまだ考えられずにいる。

 福井市の酒気帯び運転2人死傷事故 2020年11月27日午前2時ごろ、同市内で酒気を帯びて乗用車を運転した会社役員(当時)の坂田達磨(たつま)受刑者(47)が、一時停止を無視したことからパトカーに追跡され逃走中、時速約105キロまで加速して交差点に進入。軽乗用車に衝突し、助手席の塩崎里桜さん=当時(18)=を死亡させ、運転していた男子大学生(22)に重傷を負わせた。坂田受刑者は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)と道交法違反(酒気帯び運転など)の罪で起訴され、福井地裁は21年9月、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪を適用し、懲役5年6月の実刑判決を言い渡した。双方が控訴せず、刑が確定した。


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