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「骨折明け」にも性質を細かく見極める必要がある【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年11月26日 06時00分

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2度の骨折を乗り越えたオーソリティ

2度の骨折を乗り越えたオーソリティ

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 ジャパンCに駒を進めたオーソリティはここまで2度の骨折を克服している。1度目は3歳春の青葉賞を制した後。左前球節部に骨片が飛んでいることが判明し、昨年のアルゼンチン共和国杯まで休養。2度目は今春の天皇賞・春の後。今度は左脛骨(けいこつ)の骨折で、やはりアルゼンチン共和国杯が復帰戦だった。
 2度のアルゼンチン共和国杯制覇は「骨折明け」と言ってしまえば共通の過程だが、骨折の性質を細かく見てやる必要がある。
 けがなどをした馬の復帰率、復帰後の成績には統計がある。1998~2008年ののべ1万1336症例を追跡した統計が2011年、JRAの研究発表会で公表されている。屈腱炎(けんえん)と5つの部位の骨折、鼻出血(運動性肺出血)、心房細動の8つの疾病について、競走復帰率、平均休養期間、復帰後の獲得賞金水準、複勝率が調べられた。
 前肢では、腕節(手首=前ヒザ)、第1指骨(蹄の3つの骨のうち、最も体幹寄り。冠骨)では獲得賞金、複勝率に統計的に低下が認められなかったが、第3中手骨(管骨)はどちらも明らかに低下。後肢では、第1趾骨(蹄の3つの骨のうち、最も体幹より)はそれぞれ有意な低下は認められなかった一方、第3中足骨(飛節のひとつ蹄より)では獲得賞金が低下した。
 前後で復帰後の成績が低下した第3中手骨、第3中足骨は、それぞれ人では手のひら、足の「甲」を形成する骨。馬では前後の着地時に、路盤からの衝撃をまともに受ける骨だ。
 オーソリティの骨折部位は前が球節で管骨のひとつ先、後ろが脛骨で飛節をはさんで第3中足骨のひとつ体幹側だ。どちらも致命的な部分を避けられたという見方もできるが、脛骨は第3中足骨に駆動力を伝えていくので、疾走時の力学的な役割の重要性は第3中足骨に匹敵する。
 同じ「骨折からの復帰」でも、脛骨骨折からの復帰だった4歳時アルゼンチン共和国杯の方が、越えるべき峠は数段険しかったはずだ。これをやすやすと越えてきたオーソリティの地力、精神力たるや、軽く扱うわけにはいかない。「休み明け初戦からの上積み」という部分以上に、オーソリティの今走には一目置かねばなるまい。

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