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<EYES> フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん 故郷の家族 無念

2021年11月25日 05時00分 (11月25日 09時52分更新)

ウィシュマさんの妹のワヨミさん(右)、祖母のミリさん(中)、母のスリヤラタさん

 スリランカの最大都市コロンボから車で北東に進むこと1時間。ココナツの林や田んぼが広がるのどかな村に、ウィシュマ・サンダマリさんの実家はあった。ウィシュマさんは今年3月6日、名古屋出入国在留管理局の収容施設内で亡くなった。自力で歩けないほど衰弱しながらも、点滴や入院などの措置は最後まで受けられなかった。
 実家では、ウィシュマさんの妹であり次女のワヨミさん、母のスリヤラタさん、86歳になる祖母のミリさんが、共に温かく迎え入れてくれた。3姉妹が仲良く眠っていた小さな部屋には、幼い頃の壁の落書きや、ウィシュマさんの化粧道具がそのまま残されていた。「絶対に部屋をそのままにしておいてね」と言ってウィシュマさんは日本にたっていったのだという。いつか戻ってくるつもりで、妹たちに伝えたのだろう。
 夜、夕食を囲んでいると、スリヤラタさんがふと手を止めた。「家に帰ってくるとウィシュマはいつも、門の向こうから、『母さん! おなかすいた! お皿にご飯いっぱいに盛ってきて!』と、駆け込んできたんですよ」。きっとその瞬間、リビングの空気がパッと明るくなったことだろう。
 家族の日常のいたるところに、ウィシュマさんの思い出が宿っている。思い返すたびに、「なぜ」という無念も募るだろう。死の真相究明の道のりは、今後も続く。
 <やすだ・なつき> 1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)他。上智大学卒。TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

◆NPO法人Dialogue for Peopleのサイトはこちらから。

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