本文へ移動

『彭帥事件』が新たな火種… 言いたくはないが言う、オリンピックは本当に危ない【満薗文博コラム】

2021年11月24日 13時26分

このエントリーをはてなブックマークに追加
彭帥選手(AP)

彭帥選手(AP)

 秋が深くなっていく。中国・北京の霧は晴れないまま日数(ひかず)が進む。2022年北京冬季オリンピックは、来年2月4日に、17日間に及ぶ会期の開会式を迎える。もっと身近に言えば、その日までおよそ70日となった。
 ありきたりに言えば「開幕前夜」である。そんな状況下、1人の中国女子テニス選手、ダブルスの元世界ランク1位、彭帥(ほうすい)選手が放った一矢は、スポーツ界、特にオリンピックに衝撃を与えた。11月2日、中国の交流サイト微博(ウェイボ)にアップされ、わずか30分後には消えた(消された?)という文言が、事の発端である。詳細は避けるが「かつての副首相に言い寄られ、不倫関係にあった」ことを告白する衝撃的な内容だった。
 この一件は、瞬く間に世界に知れわたる事となった。中国政府は「知らぬこと」を通すが、スピードアップする通信網によって、世界にあっという間に拡散した。会場の一部では既にテスト大会も行われ、準備は万端だと言うが、北京大会に漂う暗雲は晴れないままの日々が続く。米国を始め、幾つかの国が追随の姿勢を見せ、厳しい目を注ぎ、政府関係者の派遣を見送る「外交的ボイコット」に言及するに至っている。「彭帥事件」ばかりでなく、ささやかれる一部民族への「人権抑圧」が、もう一つの理由である。
 そんなさ中、IOCのトーマス・バッハ会長が最近、突然のように、雲隠れしているとされる「元気な」彭帥選手とテレビ会談を行ったとされる映像が、世界に流れた。バッハ氏と中国側の親密ぶりは、オリンピック関係者の間ではよく知られることと言う。しかし「彭帥元気」は、一部で歓迎されつつも、他方では新たな「疑惑」を生み出している。世界の女子テニスを統括するWTA(女子テニス協会)のサイモン会長は「真偽」を問い「疑念は晴れていない。このままでは今後、中国での世界大会の開催は難しい」と強硬な姿勢を示している。
 それにしても、1896年に始まり、120年に及ぶオリンピック・ムーブメントが揺らいでいる。先に終わった東京夏季五輪は、コロナで揺れに揺れ、開催されたが「心に残ったスポーツ・シーン」を問われて、答えに窮する市民は多い。参加したスポーツマンたちに何の非はない。気の毒なことである。開催地(国)の世論をどこ吹く風と流し、強硬に踏み切ったのも、このバッハ氏の主導による。「彭帥事件」が新たな火種になることは十分に考えられる。
 これまで、4度(あえて東京を含めたら5度)オリンピックを現地取材し、細々とオリンピック研究を続ける老記者だが、オリンピックの行方に、ここまで黒く立ち込める霧を見た事が無かった。今回の「彭帥事件」、コロナの下の東京五輪だけではない。ほかの難問には、今回触れないが「平和の祭典」に問題は山積である。言いたくはないが言う。「オリンピックは本当に危ない」と―。(スポーツジャーナリスト)

関連キーワード

おすすめ情報

購読試読のご案内

プロ野球はもとより、メジャーリーグ、サッカー、格闘技のほかF1をはじめとするモータースポーツ情報がとくに充実。
芸能情報や社会面ニュースにも定評あり。

中スポ
東京中日スポーツ