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<ユースク> 1300万円失う…国際ロマンス詐欺、その後

2021年11月22日 05時00分 (11月22日 05時00分更新)

 国際ロマンス詐欺に遭い、1300万円近くをだまし取られた体験を1月11日付のユースク特設面でお話ししました。その後、犯人を摘発してもらおうと、だまされたふり作戦で警察に協力。被害者救済制度のおかげで少なからぬお金が戻ってきましたが、悔しさは今もあります。国際ロマンス詐欺の怖さをより多くの人に知ってもらい、だまされないように気を付けてほしいです。(北海道千歳市、50代女性)

 「自分と同じような被害者が出ないように」と、1月の特設面で自らの体験談を明かした女性。犯人との生々しいやりとりを振り返り、反響を呼びました。あれから捜査はどのように進展したのでしょうか。女性がどの程度、救済を受けられたのかも気になります。連絡を取り、事件の「その後」について改めて話を聞いてみました。(石井宏樹)

愛のささやき、だまされないで

 女性は昨年10〜11月、「米兵のジェフリー」を名乗る男と会員制交流サイト(SNS)で知り合い、LINEでやりとりするように。「結婚しよう」。甘い言葉で心の隙を突く男に、恋愛感情を持ったという。やがて、男や「代理人」は小包の運送料やトラブルの解決金など、さまざまな名目で無心を始めた。女性はそれに応えようと消費者金融や親から借りるなどし、多額の送金を繰り返した。

 −当初の取材時「今も男に未練がある」と揺れ動いていた。現在の心境は。

国際ロマンス詐欺被害のその後を語る女性=札幌市内で

 (恋愛が)本当だったら良かった、という思いは今はない。だが、つらい気持ちは全く変わらない。事件を知る知人は「時間がたてば忘れる」と言ってくれる。気を紛らわそうと仕事を変えたが、どうしても事件のことが頭を離れない。
 振り込んだATM(現金自動預払機)の近くを通るたびに、当時の気持ちを思い出してしまう。まるで(その頃の)自分を、テレビの再放送で見せられているような感覚だ。
 女性が被害に気付き、警察に相談した後も、金を引き出そうとするジェフリーや送金先の運送会社を名乗る男からは、メッセージが届いていた。女性は平静を装ってジェフリーらとやりとりを続けつつ、警察の「だまされたふり作戦」に協力し、捜査の進展を待った。ニセ電話詐欺でよく使われる捜査手法で、国際ロマンス詐欺では珍しい。
 −どのようにやりとりを続けたのか。
 ジェフリーは「モンゴルの刑務所にいる。金を送って救い出してくれ」と懇願したり、「なぜ私を助けてくれない」と要求したり。私はお金はなかったが、「親の遺産が入りそうだ」とうそをつき、相手を引き留めることにした。
 何とか逮捕につながる情報を引き出そうと、「直接話がしたい」と繰り返し持ちかけ、ビデオ通話ができる寸前までこぎ着けた。警察の通訳担当者に私のおいを名乗ってもらい、通話してもらう手はずだった。ところが、ジェフリーは「おいの写真を送れ」と急に警戒し始めた。「事前にはできない」と伝えると、直接話すことは断られた。すごく警察の存在を警戒していた。
 −捜査の状況は。
 警察には、犯行に使われた口座の凍結をしてもらった。通信情報から、やりとりの相手がナイジェリアあたりにいることが分かった。しかし、「それ以上は追えない」と。諦めるしかないのか、と悔しい。
 犯人の逮捕を一番望んでいる。それと、多くの人に国際ロマンス詐欺の怖さを知ってもらいたい。
 −自身のSNSアカウントに何か変化は。
 私のフェイスブックには、今も別の外国人男性を名乗る人物らから「友達になって」といった不審なメッセージがばんばん来る。どれも「妻と死別し子どもは海外の寄宿舎にいるので寂しい。偶然、あなたを検索した」という内容だ。
 日本人が親しみを持てるようにとの狙いからか、アジア系の顔立ちをした写真を使う点も共通している。いろいろなグループが、手当たり次第に行っているようなので注意してほしい。

 振り込め詐欺救済法に基づく「被害回復分配金制度」の利用を警察から勧められた女性。犯人が悪用した四つの銀行口座の残金から、計約180万円が戻ってきたという。別の1口座でも手続きが進められており、さらに100万円程度が戻る可能性がある。女性は、自分が受けた被害をきちんと警察に相談することが重要だと強調する。

 −一部ではあるが、被害金が何とか戻ってきた。

被害回復分配金の支払いが決まったことを女性に伝える通知書=一部画像処理

 実は、一部の口座で銀行側が不審なお金の動きに気付き、私が被害届を出すより前に口座を凍結してくれていた。警察からは「銀行のファインプレーだった」と言われた。その結果、予想していた金額の10倍以上が分配金として戻ってきた。助かる、良かったという気持ちだ。
 一方で、悔しい気持ちはある。詐欺師にしたら、捕まらなければいくらでもお金をつくれる、と思っているはずだ。(捜査や口座凍結は)「ぬかにくぎ」なんだろうと。
 私はだまし取られたお金の一部を、親に出してもらっていた。結果として、私自身が高齢の親からお金をむしり取った加害者になってしまった。
 −つらくても警察に相談した方がいい、と。
 警察に被害を相談すると、細かな部分を思い出すことになり、現実を突きつけられた。精神的にきつく、恥ずかしかった。しかし、今となっては良かった。
 被害届を出すことで、気持ちや生活を変えるスイッチをつくることができ、一部の被害金は戻ってきた。一から十まで泣き寝入りする必要はない。この記事を見て、被害届を出そうという人が増えてほしい。

 被害回復分配金 振り込め詐欺救済法(2008年施行)で、振り込め詐欺やヤミ金融、未公開株詐欺などの被害者のために設けられた救済制度。捜査機関からの情報提供や被害者からの申請を受けた金融機関が、犯罪に使われた口座を凍結。被害者らは、被害額や口座の残高に基づいて、分配金を受け取れる。2020年度の分配金は約11億円。

 国際ロマンス詐欺 会員制交流サイト(SNS)を通じて、欧米や紛争国に住むという異性から結婚や交際を申し込まれ、恋愛感情を利用されて金銭をだまし取られる詐欺の手口。大金を入れた包みや高価な贈り物の輸送費、手数料を求める手口が多いが、生活費や渡航費用を直接、要求することもある。中高年の被害者が多く、日本だけでなく欧米でも同様の詐欺が相次いでいる。

 お断り 1月の紙面では、当時の警察の捜査に支障が出るのを防ぐため、注意書きをした上で事実関係について細部の一部を省略したり、米兵の名前を実際とは異なる「ジョン」という仮名にしたりするなど、改変していました。


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