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焼津カツオ窃盗 漁協職員ら5人起訴

2021年11月17日 05時00分 (11月17日 05時03分更新)
冷凍カツオを盗んだとして、職員1人が窃盗の罪で起訴された焼津漁協=焼津市で

冷凍カツオを盗んだとして、職員1人が窃盗の罪で起訴された焼津漁協=焼津市で

  • 冷凍カツオを盗んだとして、職員1人が窃盗の罪で起訴された焼津漁協=焼津市で
 焼津市の焼津港で水揚げされた冷凍カツオの窃盗事件で、静岡地検は十六日、焼津漁協の職員ら五人を窃盗の罪で起訴し、二人を処分保留とした。
 起訴したのは、焼津漁協職員吉田稔(40)=焼津市東小川二、水産加工会社「カネシンJKS」元社長進藤一男(60)=同市大村新田、同社元役員奥山善行(47)=藤枝市藤枝四、いずれも運送会社「焼津港湾」社員の白鳥賢(さとし)(47)=焼津市本中根=と、杉山智良(43)=同市田尻北=の各容疑者。
 起訴状によると、五人は共謀して、今年二月八日、同漁協魚市場第六バース外港売場で、船会社の極洋水産(焼津市飯淵)所有の冷凍カツオ約四・五トン(時価合計約百万円)を盗んだとされる。
 この窃盗に関与したとして、十月二十七日に五人とともに窃盗の疑いで焼津署に逮捕された同市内の漁協職員の男性と、別の窃盗容疑で同日に逮捕された漁協の元職員で船会社社員の男性は、処分保留で釈放された。

◆「量が減る」業界で流布

 焼津港で発覚したカツオの大規模窃盗事件は、公正な取引を推進するはずの漁協の職員を含め五人が起訴される事態となった。業界では以前から「焼津で水揚げすると量が減る」とうわさされ、船会社や捜査関係者は立件されたのは「氷山の一角」とみる。地元では冷凍カツオの水揚げ量日本一の「焼津ブランド」を守るためにも全容解明と再発防止の徹底を求める声が上がる。
 水揚げされた冷凍カツオは通常、業者が競り落とした後に漁協が計量し、業者が契約する冷凍倉庫に運送会社が運ぶ。
 県警によると、カネシンJKSの社長だった進藤被告の指示で部下の奥山被告らが窃盗を主導。漁協の計量責任者だった吉田被告が運送会社の白鳥、杉山両被告にカツオの抜き取りを指示、当時計量業務を担当していた漁協職員は、それを黙認していた。
 今回被害に遭ったのは、冷凍カツオの中でも、生食用で鮮度が良く、比較的値段の高い「PS」と呼ばれるもの。盗品は市場の半値で取引され、吉田被告ら漁協職員にはカネシン側から一回の犯行につき、十万円が環流していたという。カネシンは盗品を缶詰などに加工していた。ただ、カネシン、漁協側の代理人弁護士は共に主導的な役割を否定している。
 水産庁元次長の宮原正典さん(66)は「漁協職員が関与した窃盗事件は聞いたことがない」と驚く。
 「発覚したのはほんの一部だと思う。もっと広がりのある話で、徹底的に追及してほしい」。今回被害に遭った船会社の幹部は漁協職員らの逮捕後、怒りをあらわにした。
 同社のように焼津港に入る海外まき網漁船は二十社ほど。捜査関係者によると、立件された漁協職員や元水産加工会社役員だけでなく、三十年ほど前から人を替えて窃盗が続けられていたとみられ、被害額は概算で数十億円との見方もある。別の船会社の幹部は「漁協の職員がやっていたなんて。窃盗は昔からあったと聞くし、七人の逮捕だけでは納得できない」。この会社も被害届を検討しており、捜査幹部は「闇は深い」と話す。
 二〇一九年の冷凍カツオ水揚げ量は十一万一千三十二トンと日本一で、全国の六割を占める。被害を受けた可能性のある船会社の一つは「ブランドへのダメージを広げたくない」とあえて被害届を見送った。船の焼津港離れを危惧する声もある。
 職員逮捕を受け、漁協は先月、顧問弁護士や焼津市の経済部長などで構成される調査委員会を設置。職員の聞き取りなどを進めており、十一月中に報告書を公表する。漁協幹部は取材に「真実を全て明らかにする」と話す。 (板倉陽佑)

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