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カロリーナ編(8) 恩返しの先へ

2021年11月22日 05時00分 (11月22日 05時00分更新)
北尾まどか(左)が将棋の海外普及に活用している「どうぶつしょうぎ」をPRするカロリーナ・ステチェンスカ

北尾まどか(左)が将棋の海外普及に活用している「どうぶつしょうぎ」をPRするカロリーナ・ステチェンスカ

頑張りましょう、お互い

 二〇一九年二月、東京の将棋会館で指された第一期清麗戦の予選。カロリーナ・ステチェンスカ(30)は、自身をプロへと導いた北尾まどか(41)と向き合った。二人の公式戦初対決。中盤まで押されていたカロリーナは、飛車交換から攻勢に。最後は大駒を巧みに使い、穴熊で堅く守られた敵将を討ち取った。
 将棋界では、弟子が師匠に勝つことを「恩返し」という。二人は師弟ではない。でも、それは紛れもなく恩返しだった。<感想戦のあと、駒をしまって礼をしたときに「いままでお世話になりました。北尾先生。」とカロリーナ。すべてが報われました。ありがとう>。直後に北尾がツイッターに書き込んだ一文が、感激の大きさを物語る。
 九カ月後の再戦は、北尾が意地を見せて勝利。二人の星は一勝一敗の五分になった。しかし、三度目の対局が実現しないまま、カロリーナは休場届を出して欧州に帰ることになった。「彼女の成績がよくなってきたところだったので、正直、もったいないなという気持ちはあります」と北尾。外国人プロの道を開いたカロリーナの功績をたたえつつ、「彼女が海外に居ながら活躍できるよう、将棋界がバックアップしなければ」と力を込める。
 株式会社「ねこまど」を経営する北尾の目標は、将棋をビジネスとして成立させることだ。「ちゃんとお金がまわる形にしないと続かない」と考えている。そのマネタイズ(収益化)の視点は、時にボランティアベースの活動とバッティングする。だから将棋の海外普及で志を同じくする北尾とカロリーナであっても、考えや方法が一致するとは限らない。欧州に移ったカロリーナの存在は頼もしいが、北尾は軽々に連携するとは言わなかった。
 「それぞれの人生を、お互い頑張りましょう。最終的には、そういうことになるんでしょうね」。二人はこれから、盤外で切磋琢磨(せっさたくま)してゆくのかもしれない。(敬称略)
(岡村淳司)
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