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<多数決>後編 最善の決め方とは?

2021年11月14日 05時00分 (11月14日 05時00分更新)
 今月のテーマは「多数決」。多数派が決めたことはいつも正しいのか。集団内の意見が対立したとき、みんなが納得できる答えを導き出すにはどうしたらいいのか。後編は、専門家のお話から、ものごとの決め方について考えを深めます。

多様な代替策知ろう 慶応大教授(社会的選択理論)・坂井豊貴さん

坂井豊貴さん

 多数決は唯一の選択肢ではありません。日本は多数決が当たり前。ほとんど代替策を学ぶ機会がないまま、大人になってしまうのは問題です。
 ここまで単純な多数決ばかり使う国は、そんなに多くない。選挙制度でも、当選させたい候補者に優先順位を付けるオーストラリア、決選投票があるフランス大統領選など多段階的な方法があります。
 多数決の利点? あまりないと思います。多数決は自分が一番支持する対象にしか投票できません。投票という情報処理装置に、最少の情報しかインプットできない。たとえば、一位に三点、二位に二点、三位に一点などと順位を付けて投票する「ボルダルール」を使えば、より豊かな情報をインプットできます。
 「票割れ」の問題もあります。二〇〇〇年の米大統領選は共和党のブッシュ氏と民主党のゴア氏の争い。世論調査はゴア氏優勢でしたが、よく似た主張の別の候補に票が流れた結果、ブッシュ氏が当選しました。多数決は必ずしも多数の意見を反映しません。
 投票は、満場一致で合意を得られない場合にやむなくやるもの。集団内で特定の一人をいじめる案でさえ可決できてしまうからこそ、多数決で決めてはいけないこともある、という近代立憲主義の考え方を知っておくべきです。

納得するため熟議を 名古屋大教授(政治学)・田村哲樹さん

田村哲樹さん

 良い決め方とは何か。二つの要素があります。正しい結論を得られるかどうかの「正当性」と、みんなが納得できるかという「正統性」。単純な多数決よりも話し合いの方が納得度の高い決定が生まれる、というのが政治学の「熟議(じゅくぎ)民主主義」の考え方です。
 学校で文化祭の出し物を決めるとしましょう。いきなり選択肢を挙げて多数決で決めてしまうと、後から「実は嫌だった」とか「決まったからやるだけ」となりかねない。
 まずは、それぞれの案についてみんなで意見交換してみる。どんな意義があるのか、準備は大変か。場合によっては別の案が出てくるかもしれない。みんなが選択肢を“自分のもの”にしてからだったら、多数決で決めたとしてもある程度、納得できる結論になるんじゃないでしょうか。
 意見の違いがどこにあるかが明らかになるだけでも意義があります。勝ち負けを競うのが話し合いではありません。他人の意見に納得したら、自分の考えを見直す。みんなで決めたことが間違っていたら、もう一回見直し、話し合う。話し合いに時間がかかるというなら、あらかじめその時間を予定しておけばいい。
 何かを決める時は、すぐに決めようとしない方がいい。違う人の意見をよく聴くところから始めてみることです。

記者はこう考えた

 うどんか、そばか。今日のお昼は何を食べようか。思い悩んで考え抜いた末、うどんをすする。そこで気付く。「やっぱりパスタにすべきだった」。とかく、人の心は移ろいやすい。
 私たちの日常は決断であふれている。ランチに誘った友達がきしめん派だったらどうしよう。麺類が苦手な友達だっているかもしれない。意見を戦わせるか、擦り合わせるか。地球上に一人として同じ人間はいない。どんな決め方をするにしても、自分と他人の考えを整理するところから話は始まる気がする。 (杉浦正至)

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