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ウインマリリンの中間不安要素「肘腫」って何だ?【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年11月12日 06時00分

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エリザベス女王杯に出走するウインマリリン

エリザベス女王杯に出走するウインマリリン

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 本来、天皇賞・秋の前哨戦として設定されているオールカマーだが、今年はエリザベス女王杯の前哨戦として機能していた。連対2頭を含む5頭がここをステップにエリザベス女王杯へ駒を進めた。
 勝ったウインマリリンは本来、そこで4着に終わったレイパパレに迫るくらいの人気を集めても良さそうなものだが、一歩下がった人気に落ち着きそうだ。中間に右肘が腫れ、熱発したという調整過程が不安要素として挙げられている。
 同馬は天皇賞・春(5着)の後、同所を手術している。「ハイグローマ」。和名では「肘腫(ちゅうしゅ)」。競馬の世界では耳なじみの薄い病名だが、愛犬家、特にセントバーナードやグレイハウンドなど大型犬の飼い主は耳にしたことがあるかもしれない。大型若齢犬でしばしば起こる。
 肘に限らず可動域の大きな関節は、接近する骨同士の動きを滑らかにするため骨と骨の空間に滑液がある。いわば“潤滑油”だ。ただ、液体があるだけではそこにとどまってくれない。「滑液嚢(かつえきのう)」という袋に入っている。
 関節に断続的に刺激が与えられると、生体は骨同士の衝突を防ごうと滑液を増やす方向に反応する。大型犬の場合、硬い床に寝そべったりすると、肘関節への外刺激によって滑液が増えすぎ、滑液嚢が過剰に膨らむ。ひどいと、肘からはみ出るように腫れる。
 馬では肘にこうした外刺激が与えられることはまれ。ウインマリリンは前駆の回転が非常に大きいため、骨同士の干渉で肘関節への刺激を生み出してしまったように思われる。
 ただ、対処法はシンプル。消炎剤などの内科的な方法で沈めたり、外科的には滑液を注射針で抜き取るか、滑液嚢を切除する。近年は手術と言ってもすべて全身麻酔ではない。美浦が先駆けて導入した技術だが、鎮静剤を打って立ったまま行うこともしばしばだ。全身麻酔で倒馬する大掛かりな手術に比べると、侵襲度はかなり軽く済む。
 続発した熱発によって乗り出しが遅れた分は別にして、今回の同馬に関してはシンプルに今の動きを見てやればいい。10日の美浦Wでの単走はこの馬らしく、前駆の柔らかいダイナミックな動きだった。

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