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公立小と融合する「名古屋型イエナプラン」 自律と尊重の学びに注目

2021年11月11日 05時00分 (11月11日 08時32分更新)
 オランダで発展した「イエナプラン」教育を日本の公立小学校に取り入れる動きが、全国で増加している。子ども一人一人が尊重され、主体的・協働的に学ぶ手法やコンセプトが、文部科学省が掲げる「令和の日本型学校教育」の実践として捉えられているからだ。 (宮崎厚志)

3年生の「YST」の様子と視察する教員ら=名古屋市東区の山吹小学校で


 名古屋市東区の山吹小学校。十月二十日、市教委主催で行われた公開授業に市内外から約八十人の教育関係者が集まった。
 十二学級で公開されたのは「YST(山吹セレクトタイム)」と呼ぶ学習時間。児童らは週間計画に基づいて学びたい教科、使いたい教材、誰と学ぶかなどを選択する。教師は児童一人一人の進度を把握し、サポートに徹する。イエナプランで「ブロックアワー」と呼ばれる時間を元にしたもので、週に五〜十二こまほどある。
 タブレット端末でのドリルに取り組む子もいれば、廊下で理科の実験をするグループも。子どもらは注がれる視線を意に介さず、各自の学習に集中した。分からないところがあれば自然と周囲の子に頼り、教える側の子も嫌な顔はしない。
 互いを尊重し合う。一年から六年まで共通したその姿に、同小卒業生が入学する冨士中の山村伸人校長は「自己学習力は中学でも必要な力。探究的な学習と合わせ、本校でも前向きに取り組んでいきたい」。学び方の継続に意欲を見せた。
 同小では昨年、五、六年の授業にイエナプランのコンセプトを取り入れ、本年度から全学年に広げた。山内敏之校長は「一部の特別な教員がいるからできるのではなく、公立の普通の学校でもすべての教室でできる」と力を込める。他校が取り入れやすい実践を意識し、「そのまままねるのではなく、名古屋の教育に合うよう、いいとこ取りをしている」と説明した。

 3年1組の10月のある週の時間割表。月曜の算数と国語の「インストラクション」では、教員が単元ごとに学習の見通しを立てるための説明をする。児童は下部の【今週の課題】をもとに、時間割表の12こまの空欄(YST)に、学習計画を立てる。週の終わりには自己評価による振り返りをする。図工、体育、音楽などは全員一緒に行う。

「令和の日本型学校教育」を形に

 文科省中央教育審議会は一月、「令和の日本型学校教育」を発表。いじめや不登校、学習意欲の低下など、画一的な教育では解決できない多くの課題を認識した上で、指導の個別化と学習の個性化、探究的な活動や体験を通じて他者と協働する学びなどを掲げる。
 これを受け、多くの自治体や学校がイエナプランに注目する。
 名古屋市教委は、先立つ二〇一九年八月、教員八人をオランダでの研修に派遣。昨年二月には本国から研究家を招いた大規模な勉強会も開催。本年度は、民間事業者と組んで学校の課題解決を図る「マッチングプロジェクト」の一つとして、山吹小で一般社団法人日本イエナプラン教育協会による教員研修を行っている。
 公開授業で成果を確認した鈴木誠二教育長は、山吹小に実践と発信の役割を期待しつつ、「誰もがこれを学べるようにまとめ、展開していく」と、市内の希望する学校への拡大を図る。

全国に広がり、行政も動く

 また、岐阜市の則武小では本年度から月に一度、イエナプラン導入日を設け、半日から一日、異年齢で協働的に過ごす取り組みを始めた。広島県福山市では来年四月、日本初となる公立イエナプランスクール「常石ともに学園」が開校する。
 長野県佐久穂町にある私立校、しなのイエナプランスクール・大日向小学校にも視察依頼が相次ぐ。同校理事で、十月に同県教育委員に就任した日本イエナプラン教育協会の中川綾さんによると、導入に動く自治体も複数あるといい、「コンセプトを理解してもらえれば、『いいとこ取り』でも問題ない。これまで教員の間で草の根的に広まってきたが、行政が動くのは大きい」と歓迎する。

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