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里山 焼き芋から一歩 「森づくりを始めるので、これをホームステイさせてもらえませんか」

2021年11月6日 05時00分 (11月6日 10時12分更新)

越中芋騒動の今季初の販売に松下さん(中央)のつぼ焼き芋を求めて多くのファンが訪れた=南砺市の道の駅井波で

「ドングリ育苗ポット」松下さん、移動販売で託す

 木炭を使うつぼ焼き芋の「越中芋騒動」店主、松下兼久さん(47)が、県内各地の里山を舞台に構想を進める炭づくりのための森づくり。今月初め、南砺市で行った今季最初の焼き芋販売で、将来、炭焼き原料の木になるドングリを竹筒に埋めた手作り育苗ポットをお披露目した。同市には近く移住して芋栽培もするという。今の自宅の舟橋村も拠点にしながら、富山に豊かな里山を広げていく。(中島健二)
 焼き芋の香ばしくて甘い香りが漂った。今月初め、南砺市の井波地区にある道の駅で開かれた「いなみ物産フェア」の会場。松下さんが、移動販売車に載せたつぼで芋を焼いていくと、ひっきりなしに買い求める人がやってきた。
 車の脇に置いた育苗ポットに気付いて尋ねる人も。

つぼ焼き芋を焼くつぼの中に芋をつるして蒸し焼きにする。底にある炭の火力がおいしさを引き出す

 「中にドングリが入ってます。つぼ焼き芋の燃料は炭。それを自給するための森づくりを始めるので、これをホームステイさせてもらえませんか」。松下さんの呼び掛けに、高岡市からつぼ焼き芋目当てに来た大木宣幸さん(65)、恵美さん(55)夫妻が早速、受け取って持ち帰った。「これで少しでも緑が増えて環境破壊の防止になれば」と。
 つぼ焼き芋は昔の手法だが、最近の焼き芋ブームの中で人気が高まる。大きなつぼの底で炭や練炭を燃やし、中に芋をつるして一時間近く蒸し焼きにする。芋の種類にもよるが、陶器の遠赤外線効果で一般的な石焼き芋より、ねっとりとした食感や上品な甘さが出るとされる。特に、自ら炭焼きの修業までするほど炭にこだわる松下さんの焼く芋は多くのファンがつく。

炭づくりのためのドングリを拾い集める松下さん(左)=氷見市上田で

 その大切な炭づくりにつなげる「どんぐりのホームステイ」。今夏からドングリの調達場所を探し、秋に氷見市や南砺市、富山市などを回って十分な数を集めた。氷見市では、県外から移住して林業を志す佐藤文敬さん(43)が地元の人たちと世話をしている山林でクヌギのドングリを拾い、広がりすぎる竹林から竹を切り出して筒状の育苗ポットにした。
 全部で二百十個になったポット。焼き芋を買い求めた人に説明して、賛同してくれた人に預け、数十センチの幼木になるまで一年半、育ててもらう。植樹の場所は南砺市利賀地域で借りた約二千平方メートルの山林。二〇二三年には植える予定だ。
 十月下旬、松下さんが焼き芋用のいろいろな芋を栽培する富山市八尾町桐谷の畑で芋掘り会が開かれた。県内各地から集まった数家族はみんなつぼ焼き芋ファン。富山市から子ども二人と来た女性は「子どもはドングリ拾いが大好き。ドングリの木を増やせばみんな楽しめる」とホストファミリーになることを決めた。
 まだまだ先が長いドングリプロジェクトだが、松下さんの思いは深い。「持続可能な焼き芋屋をやっていくために、里山への関わりも永続的に続けたい。そのためにはコミュニティーづくりが大切だと思う」。だからいろんな人と森を育てていくという。
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