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与田監督お疲れさま…師匠・星野仙一さんの教えを胸にフェアを貫いた3年間

2021年10月27日 10時56分

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今季最終戦を勝利で終え、スタンドにあいさつする与田監督

今季最終戦を勝利で終え、スタンドにあいさつする与田監督

◇ヘンリー鈴木のスポーツ方丈記
 中日・与田剛監督の3年間が終わった。通算183勝199敗24分け。就任前年までの4年間を5、6、5、5位と低迷していたチームの立て直しを託されたものの、3年間の順位は5、3、5位で優勝争いに加わることはできず、特に今季は開幕から最後まで打線が波に乗ることができなかった。自問自答を繰り返して眠れない日々も続いたことだろう。しばらくは心身の疲れを取っていただきたいと、心から願っている。
 与田監督のプロ野球での最初の師匠は、ドラフト1位で中日に入団した時に指揮を執っていた星野仙一監督(故人)だった。星野監督が常々口にしていたのは「どんな時でも球場に来てくれているファンのためにベストを尽くして戦う」だった。優勝争いから脱落して夏が過ぎようとしていたころに、生意気にも「来季を見据えて期待の若手を使ってみたらどうか」と言ってしまったことがある。それでも「優勝の可能性が数字上で残っている限りは、諦めたような戦いはしない」と譲らなかった。
 この思いは、ファンのためだけではない。監督はチームを勝利に導くことが仕事であるのはもちろんだが、選手、コーチ、スタッフら一人一人の生活を守る重荷も背負っている。シーズン前に優勝を目標に掲げたのなら、その可能性がわずかでも残っている限りは目の前の試合に考え得るベストのオーダーで臨む。それが最もフェアであり、そこから外れた戦い方をすれば1試合1試合に生活、もっと言えばクビをかけている選手からは必ず不満が出て、チームは空中分解する。
 付け加えれば、米大リーグで下位低迷する球団が早い段階で若手に切り替えることが多いのは、それより前に同じポジションでレギュラーだった中堅、ベテランを移籍期限までに放出し、不満の声を事前に排除してしまうからだ。そのようなドライな方策は、日本のファン心情を思えば難しい。当時の星野監督は、それをよく知っていた。
 この3年間、与田監督が率いるドラゴンズを見てきて、そんな星野監督とダブることが何度もあった。フェアであることを貫こうとし、さらに現役時代に故障に苦しんだ自らの経験から選手の体調を過剰なまでに気づかった。そのことが、今季のチーム防御率も失点の少なさも12球団1位という結果につながったと思っている。
 与田監督は2016年に楽天の1軍投手コーチに就任した時、同球団の副会長だった星野さんから「今の時代は、わしのやり方は通用せんぞ」と諭された。冷静に見えるが、実際は北九州育ちの父の血を引く熱血漢。現役時代は抑えに失敗して打たれると、ロッカールームでスパイクを投げるなど大暴れして周囲をびくびくさせていた。ファンの目に「選手に優しすぎる」と映ることもあったのは、この星野さんの言葉があったからかもしれない。本当にお疲れさまでした。
 ◆ヘンリー鈴木(鈴木遍理) 東京中日スポーツ報道部長、東京新聞運動部長、同論説委員などを経て現東京中日スポーツ編集委員。これまで中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズ、大リーグ、名古屋グランパス、ゴルフ、五輪などを担当。
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