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二つの展覧会 多様なフェミニズム 金沢21美で同時開催 

2021年10月23日 05時00分 (10月23日 11時57分更新)
巨大な人形はユゥキユキさんの「あなたのために、」(2020年)。人形の背後に西山美なコさん「♡ときめきエリカのテレポンクラブ♡」(1992年)が再現展示されている=金沢21世紀美術館で

巨大な人形はユゥキユキさんの「あなたのために、」(2020年)。人形の背後に西山美なコさん「♡ときめきエリカのテレポンクラブ♡」(1992年)が再現展示されている=金沢21世紀美術館で

  • 巨大な人形はユゥキユキさんの「あなたのために、」(2020年)。人形の背後に西山美なコさん「♡ときめきエリカのテレポンクラブ♡」(1992年)が再現展示されている=金沢21世紀美術館で
  • 森栄喜さんの「Family Regained」シリーズより(2017年)
  • 藤岡亜弥さんの「私は眠らない」シリーズ(2009年)の1枚(金沢21世紀美術館提供、(C)Aya Fujioka)
  • 早逝した妹をめぐって撮影した写真で構成した岩根愛さんのシリーズ「My Cherry」の1枚(2020年)(C)Ai Iwane
 金沢21世紀美術館で「フェミニズム」を表題に掲げた二つの展覧会が同時開催されている。写真家の長島有里枝さんがゲストキュレーターを務める「ぎこちない会話への対応策−第三波フェミニズムの視点で」と美術館の高橋律子学芸員による「フェミニズムズ/FEMINISMS」。家族やトランスジェンダー、格差などもテーマにした多様な作品に「フェミニズム」のあり方が示される。
 「ぎこちない−」展は十人が出品。長島さんは一九九三年に発表した自身を含む裸の家族を撮影した「Self−Portrait」のシリーズ写真を展示した。木村友紀さんの作品「存在の隠れ家」はセルフポートレートとして撮影された身体のパーツを性的な記号で暗喩する形に切り抜いた連作。ほかに長島さんと同時期にデビューした藤岡亜弥さん、岩根愛さんの写真作品が展示された。
 上海出身の潘逸舟さんは東京を拠点にする若手アーティスト。赤い布で顔を覆い横たわる自身の裸を撮影した作品「無題」は、祖母が育った中国の村で嫁いでゆく女性の顔を隠すという風習を表している。沖縄出身で自らのアイデンティティーやジェンダーをテーマにするミヤギフトシさん、既製品を組み合わせたオブジェとその制作過程をビデオで示した小林耕平さんの作品も並ぶ。
 一方、九人が参加する「フェミニズムズ」展には、コスプレやアイドルなどのオタクカルチャーを取り入れながら制作するユゥキユキさんのピンク色を基調にした巨大な人形「あなたのために、」が出現。母親と共同作業で作り、体内にはボーイズラブの映像も流れる。
 写真家の森栄喜さん(金沢市出身)は、セクシュアリティと家族のあり方をテーマにした鮮やかな赤の写真シリーズ「Family Regained」を大きく引き延ばして展示。俳優でもある遠藤麻衣さんは、婚姻制度を巡る会話を森さんと展開する「アイ・アム・ノット・フェミニスト」と題したビデオ作品を提示する。
 その遠藤さんと百瀬文さんの「Love Condition」は、「理想の性器」をめぐる会話をかわしながら二人の手が粘土をこねる七十五分の映像作品。モノクロの木版画で歴史や社会を問う作品で知られる風間サチコさんは、人の肺を枯れた木に見立て新型コロナウイルスと愛のあり方を表現した新作「肺の森」の連作を出品した。
 もともと一つの展覧会を長島さんの監修で開く構想だったが、あえて分かれて開催された二つの展覧会。「準備を進める中でフェミニズムに対するそれぞれの考え方の違いが明らかになった」(長島さん)というが、逆に「フェミニズムも複数あっていい」という考えを主張しているようでもある。
 「ぎこちない会話への対応策」という長島さんがつけたタイトルにある「対応策」とは新型コロナの文脈で語られる英語「countermeasures against」の長島さん流の訳。フェミニズムをめぐって「ぎこちなくても語り合っていきたい」という思いも込められている。
 会期は来年三月十三日まで。 (松岡等)

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