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松田優作さん“弟”が舞台復活させる 1978年脚本・演出の「真夜中に挽歌」43年ぶり上演 元俳優の野瀬哲男さん、「アニキ」の魂よみがえらせる

2021年10月23日 05時00分

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「真夜中に挽歌」を上演した際の松田優作さん(手前)と野瀬哲男さん(後方左)ら=1978年11月(渡邉俊夫さん提供)

「真夜中に挽歌」を上演した際の松田優作さん(手前)と野瀬哲男さん(後方左)ら=1978年11月(渡邉俊夫さん提供)

  • 「真夜中に挽歌」を上演した際の松田優作さん(手前)と野瀬哲男さん(後方左)ら=1978年11月(渡邉俊夫さん提供)
  • (上段)本紙の取材に応じる野瀬哲男さん(左)と西田聖志郎さん (下段)「真夜中に挽歌」に出演する(左から)崔哲浩、野元空、藍梨、松永涼平
 昭和の名優松田優作さんが脚本・演出を担当した舞台が43年ぶりに復活上演される。タイトルは「真夜中に挽歌~1978 僕達は出会った~」(11月3~7日、東京・新宿のサンモールスタジオ)で、演出を手掛けるのは優作さんと親しかった元俳優の野瀬哲男さん(69)。優作さんを「アニキ」と呼び、「世界中で最も松田優作に愛された男」といわれる“弟”の野瀬さんに舞台にかける思いを聞き、稽古場を取材した。(近藤正規)
 「違う!! 遅い!!」。8月末、東京都内のスタジオにセリフのテンポに注文をつける野瀬さんの声が響き渡った。この日はキャスト、スタッフ一同が顔をそろえ、脚本を読み合わせる「本読み」が行われていた。初日にもかかわらず、身ぶり手ぶりを交えながら登場人物の気持ちや背景を熱く伝える。細かく指導する野瀬さんの姿に、舞台への覚悟が見て取れた。稽古が進んだ10月中旬には、キャストの動きを見守る野瀬さんの視線はさらに鋭くなっていた。
 優作さんはドラマ「太陽にほえろ!」「探偵物語」、米ハリウッド映画「ブラック・レイン」など数々のドラマや映画に出演。存在感抜群の個性派俳優として知られたが、一方で舞台を演出し演劇活動にも力を入れていた。
 復活上演される作品は、優作さんが29歳の78年に脚本・演出を担当した舞台「真夜中に挽歌」を元に構成。野瀬さんは当時キャストとして出演した。「太陽にほえろ!」などでも優作さんと共演したが、89年に優作さんが亡くなる前に俳優を引退。今年11月6日に優作さんの三十三回忌を迎えるが、追悼公演として舞台を復活させるべく32年ぶりに芸能界に帰ってきた。タッグを組むのは同じく優作さんと親交があり、映画「大綱引の恋」の企画・製作などを担当したプロデューサーの西田聖志郎さん(66)。
 野瀬さんは優作さんより3歳年下だが、72年に入所した文学座付属演劇研究所の同期として出会った。当時の優作さんについて「背が高くてアフロの髪形。げたをはいてカランコロンと鳴らしながらやってくる。圧巻だった。目立たない方がおかしい」と振り返る。入所後、さらに忘れられない運命的な出来事が起こった。研究所内で野瀬さんがエレベーターに乗り込もうとしたところ、後ろから押され中にいた優作さんの胸に顔がぶつかる形になった。優作さんは身長180センチを超える大柄で、野瀬さんは約165センチだったので「僕の唇がTシャツ姿のアニキのおっぱいに吸い付く形になった。奇跡ですよ。アニキが『おおっ』と言うから、僕は『すみません』と謝った」と笑う。
 優作さんはドラマ出演で多忙な中でも9つの舞台を手掛けたが、台本が残っているのは「真夜中に挽歌」だけ。ノートにストーリーなどを書き稽古場で役者に口頭で伝え、野瀬さんたち出演者は自身のノートに書き写していたという。稽古が始まると「内容がどんどん変わっていく。(優作さんは)持ち帰ってまたノートに書き直す。それを次の日に発表して、また私たちが書き写してという練習方法。一気に書き上げないといけないから、私のノートは平仮名ばかりになり読み上げるのに苦労した」と明かす。そんな優作さんだったが、「真夜中に挽歌」が上演される10日ほど前に「おい哲、おまえ本にしておけ」と野瀬さんに台本化を依頼したという。
 公私ともに親しかった優作さんとの交流は亡くなるまで17年間続いた。ときには逆鱗(げきりん)に触れ、何度も出入り禁止をくらった。それでもその後、優作さんから「いま暇か? 何してる?」と必ず電話がかかってきた。生前、優作さんに「真夜中に挽歌」を再演したいと伝えたところ「恥ずかしいからやめろよ」と言われたが、5年ほど前から構想を練ってきた。3年前に膵臓(すいぞう)に腫瘍が見つかっても、手術で健康を取り戻し実現にこぎ着けた。
 プロデューサーの西田さんは「優作さんと親しかったという人はたくさんいるが、野瀬さんは世界中で最も松田優作に愛された男」と評する。“松田優作”という名前が偉大すぎて「優作さんの作品をやろうと言う人は世界中に野瀬さんしかいない」と断言。野瀬さんは、自身にとって優作さんの存在は「おこがましいが、自分の青春そのもの」と言うほど心酔。優作さんの墓前にも再演を報告し「もし気に入らなければ僕を(天国に)連れて行ってください。もし気に入ったら、もう少し生かせてください」と“アニキ”に呼び掛けた。
◇4人キャストの3人芝居
 「真夜中に挽歌~1978 僕達は出会った~」は、東北から上京してきた青年・とおると、暴走族リーダーであるジョージ、その恋人ハクランが登場する3人芝居。とおるはジョージとハクランと出会い親しくなるが、物語は意外な方向に展開していく。
 とおる役は舞台初出演となる俳優松永涼平(20)、ジョージ役に崔哲浩(42)。ハクラン役はWキャストで、オーディションで選ばれた女優の野元空(23)と藍梨(23)が務める。78年の上演では野瀬さんはとおる役を演じた。
 ◆松田優作(まつだ・ゆうさく) 1949(昭和24)年9月21日生まれ、山口県出身。73年、ドラマ「太陽にほえろ!」のジーパン刑事役で脚光を浴びる。犯人に銃で撃たれ自身の血を見ながら「なんじゃこりゃあ~!!」と叫ぶ殉職シーンは語り継がれるものとなった。同年、「狼の紋章」で映画デビュー。俳優だけでなく歌手としても活動。83年、女優熊谷美由紀(現・松田美由紀)と結婚。長男・龍平、次男・翔太は共に俳優。長女・ゆう姫は歌手・タレントなどとして活動。89年11月6日、膀胱(ぼうこう)がんで死去。

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