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衆院選 ひとり親の苦悩

2021年10月21日 05時00分 (10月21日 11時43分更新)
生活支援費や一時生活再建費などを受け取れる貸付制度を利用したピアノ講師の女性=県中部で

生活支援費や一時生活再建費などを受け取れる貸付制度を利用したピアノ講師の女性=県中部で

  • 生活支援費や一時生活再建費などを受け取れる貸付制度を利用したピアノ講師の女性=県中部で
 衆院選で各党が競い合っている公約の一つは子育て支援策。新型コロナウイルスは子育て世代に暗い影を落とした。とりわけ困窮しがちなひとり親家庭は、自宅で過ごす時間が増え食費や光熱費がかさんだり、親の仕事が減ったりして家計に打撃を受けた。「ミルクやおむつが買えない」「子どもに進学をあきらめさせたくない」。支援の充実を求める切実な声が上がっている。 (久下聡美)
 県中部在住のピアノ講師の女性(42)は、五年前に離婚し、高校生の長男と大学受験を控える長女の三人で暮らす。昨年春の感染拡大時、レッスンの休講を求める受講者が相次いだ。「学校が休みなのに習い事に行くことはできないので」「高齢の家族がいるからお休みさせてください」。元夫からの養育費は受け取らず、講師として生計を立てる女性の収入は激減した。
 パートを含め十七万円ほどだった月収は、昨年四月に約二万円になった。自動車税やPTA会費の支払いも重なった。学校の休校で三人が三食を家で食べる日が続く。「光熱費もかかる。どうすれば…」。二週間分の食料配布支援を初めて受け、一時的な生活費のための「緊急小口資金」や「総合支援資金」などの貸付制度も利用した。
 今も収入は四割ほど減ったまま。「この先数年は、進学する子どもたちの生活費がさらにかかる。経済的な理由で、子どもの夢をあきらめさせたくはない」と漏らす。
 二〇一六年度の「全国ひとり親世帯等調査」によると、ひとり親女性の平均就労年収は二百万円で、ひとり親男性の三百九十八万円を大きく下回った。「大人一人と子どもがいる現役世帯」の相対的貧困率は48%にも上る。
 県内でひとり親を支援する団体「シングルペアレント101」には、「収入減でミルクやおむつはもちろん、普段の食料も買えない」といった相談が寄せられている。食料を配布する活動を行っており、コロナの影響で利用が急増。二〇年度は前年度から十一倍強増えて延べ七百件。二一年度もこれまでに延べ三百二十件の利用があった。
 田中志保代表(47)は、「高くて買ってあげられなかった子どもが大好きなジュース、やっと飲ませてあげられます」という母親の声が耳に残っている。田中代表も子ども二人を育てるシングルマザー。活動を通じ、ひとり親女性の困窮度が深まっていると肌で感じる。「シングルマザーになった途端に貧困となる。正規職を望む人には仕事を、大学進学を望む子どもには、家庭の状況にかかわらず進学できる社会を実現させてほしい」。ひとり親家庭の小さな声を聞いてほしいと願う。

<相対的貧困率>全国民の所得を試算し、高い順番に並べたとき、真ん中の人の所得の半分(貧困ライン)に満たない人の割合。二〇一六年発表の真ん中の人の所得は二百四十四万円、その半分は百二十二万円。国際比較に用いられ、その国の文化水準や生活水準に比べて、困窮状態にある人の割合を示す。十七年発表の日本の相対的貧困率は経済協力開発機構(OECD)三十五カ国中七番目に高い。

◆各党、子育てに独自色

 困窮する家庭への対応など子育て支援策について、主要政党は衆院選の政策集やパンフレットに柱を立てて訴えている。
 自民党は「基本法」を制定し、子どもの視点で政策を見直すと主張。妊娠、出産から子育てまで一体的に支援する拠点を全市町村に設けるという。連立を組む公明党は、高校三年までの全ての子どもに一律十万円の給付を掲げる。
 中学卒業までの子どもがいる世帯に支給される児童手当には、立憲民主、共産、国民民主の野党三党はいずれも十八歳または高校卒業までに拡大すると訴え。立民、共産はひとり親家庭への児童扶養手当の増額を盛り込み、国民は義務教育を三歳からとし、高校卒業まで「負担ゼロ」を目指す。
 日本維新の会は義務教育のほか、幼児教育、高校、大学など教育の全課程における完全無償化を憲法に位置付けるとしている。 (高橋雅人)

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