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戦線復帰のダノンザキッド、2歳時までのフォームを知らなければ、普通に走る馬に見えるのだが…【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】

2021年10月22日 06時00分

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ダノンザキッド

ダノンザキッド

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 骨折によって日本ダービーを回避したダノンザキッドが富士Sで戦線復帰する。同馬が患った骨折は「橈骨(とうこつ)粗面剥離(はくり)骨折」。回避にあたって記者は当欄で一般論として「骨片を取っておしまいというわけにいかず、完治に至るのは難しいケースが多い」という趣旨のことを書いた。
 実際は約半年で復帰にこぎ着けたわけだから、この一件については見通しが間違っていたことになる。ただ、一般論での推論が、個別の症例に関して当てはまらないことはしばしばある。見るべきは、いざ復帰にこぎ着けたダノンザキッドが、骨折によって能力をそがれているかどうかという「今」の問題である。
 ダービー回避時に紹介したように、橈骨粗面剥離骨折は、ひじ関節における上腕二頭筋の付着分が、引きはがされるような形で起こるのが一般的だ。
 当然、ひじの動きに注目する。2歳時の同馬はひじ関節を目いっぱい伸ばすフォーム。前蹄の到達点が体幹から遠かった。今秋は、腕節(いわゆる前ヒザ)が高く上がって前肢の回転半径が大きいフォームにシフトしている。
 腕節(人では手首関節にあたる)が高く上がるとき、ひじ関節はどうなるだろう。パソコンのキーボードに両手を置いたところから、手首を高く上げてみるとよく分かる。もちろん手首は手のひら方向に屈曲し、手先より先に上げることになるが、手首を直接上に持ち上げているのはひじ関節の屈曲だ。
 腕節を大きく回すフォーム自体はパワータイプの優駿によく見られる現象だ。一方で、ひじ関節をよく伸ばしていた馬が、伸ばしたために起こった骨折を経て、ひじを屈曲させるフォームにシフトしたというのは、ひじを伸ばすのを怖がっているようにも見える。
 正直なところ、今回で結果がどちらに出るのかは分からない。分からないことを、分からないというのも科学的な物言いとしては、重要なことである。2歳時までのフォームを知らなければ、普通に走る馬に見えるのだが…。もっともこれで結果がついてくるようなら、能力の質的な変化はあれど、絶対値の減衰は疑わなくてもよくなるだろう。

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