本文へ移動

原発事故とコロナ、政府対応に共通点

2021年10月17日 05時00分 (10月18日 12時12分更新)
 新型コロナウイルス感染症と、東京電力福島第一原発事故−。一見関係なさそうな両者だが、発生時の政府の対応が似ているとの指摘がある。専門家らによる事前の警鐘が生かされないまま発生し、国民の混乱を恐れて情報公開に消極的な姿勢がみられた。衆院選でも大きな争点として注目される政府のコロナ対応。識者は「反省点を共有し、教訓を生かさなくてはならない」と訴える。 (高橋雅人)
 「原発事故と新型コロナには二つの共通点がある」と指摘するのは、東京電力福島第一原発事故の国会事故調査委員会で委員長を務めた黒川清・政策研究大学院大名誉教授。現在は政府のコロナ対策の効果を検証する会議の委員長を担う。「一つは想定していない事態だったこと。もう一つは放射性物質もウイルスも目に見えないこと。見えないと何をしていいか分かりづらい」と語る。
 国会事故調は二〇一二年七月の報告書で、原発事故を「明らかに人災」と結論づけた。国際原子力機関(IAEA)が五段階に分けて安全対策を施す「深層防護」の考え方を示していたが、三段階までしか対策していなかったと指摘。事故は起きない前提で進められ「思考停止に陥っていたのではないか」と分析した。
 コロナでも、未知の感染症に対する備えを求める提言が発生前にあった。一〇年六月、新型インフルエンザ対策を検証した政府の有識者会議は、ワクチン接種体制の準備やPCRなど検査体制の強化を求める報告書を取りまとめた。「以前から指摘されている事項であり、今回こそ発生前からの体制強化の実現を強く要望する」。結びでこう訴えたが、提言はまたしても棚上げされた。
 静岡大防災総合センターの小山真人教授(災害情報学)も「国民はバカだからパニックになると信じ込んで、官僚が慌てふためく『エリートパニック』が起きた」とコロナと原発事故の共通点を見いだす。
 原発事故時、政府は放射性物質の拡散状況を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の予測結果を公表せず「ただちに人体に影響はない」と繰り返した。東京を含む五千万人の避難を想定した「最悪のシナリオ」も一二年一月まで伏せていた。当時、政府関係者は「過度な心配をさせる恐れがあり、公表を控えた」と説明した。
 コロナでは、政府の専門家会議が二〇年三月に出した見解から、無症状者による感染拡大の可能性に言及した部分が削除された。「パニックになる」と政府側が懸念した。同年五月にも「一年以上の長期戦を覚悟」の文言が削られた。
 小山教授は「原発事故でメルトダウン(炉心溶融)の言葉を避けたように、集団感染をクラスター、感染爆発をオーバーシュートと分かりにくい言葉に言い換えた」とも指摘する。
 一九九一年に四十三人が犠牲になった長崎県の雲仙・普賢岳の噴火では当初、住民のパニックを防ぐため「小規模な火砕流」との表現が使われた。小山教授は「軽い印象を与え、甚大な被害につながった。基本的に、リスクも含め情報は全て出すのが望ましい」と強調した。

◆備えが重要 浜岡訴訟関係者

 福島第一原発と新型コロナウイルスの政府対応に共通点がみられることには、中部電力と国を相手取り、浜岡原発の永久停止を求める訴訟関係者からも、教訓を今後に生かすよう求める声が上がる。
 塩沢忠和弁護士は「コロナの医療体制もそうだが、備えがないと、発生した時に場当たり的なことしか言えない」と事前に対応しておく重要性を指摘。大橋昭夫弁護士は「国民の命を守る観点から決断を下すのが政治家のあるべき姿」と強調する。

関連キーワード

おすすめ情報